内容説明
白き人間まづ自らが滅びなば蝸牛幾億這ひゆくらむか(『青南集』)。〈人間という白く脆弱な存在が原水爆で自滅したならば、その後は幾億もの蝸牛が這いゆくのだろうか。〉「蝸牛」はかたつむり。昭和二十九年三月アメリカによるビキニ環礁での水爆実験により、漁船第五福竜丸が被曝、乗組員一名が死亡。人々を放射能雨の恐怖が襲った。「人間の恐るる雨の中にして見る見る殖えゆく蝸牛幾百」と事実に沿って歌い、次にこの歌で戦慄的な幻想に飛ぶ。数年後、レイチェル・カーソンは『沈黙の春』で、農薬汚染により他生物が死滅した地に、蝸牛だけが這い回る様子を記した。この二つの地獄絵は相似形だ。
著者等紹介
川本千栄[カワモトチエ]
1962年京都府生。1985年より京都府立高校英語科に40年間勤務後退職。現在NHK学園短歌講座講師。1998年「塔」短歌会入会。河野裕子に学ぶ。2002年第20回現代短歌評論賞受賞。歌集に『青い猫』(第32回現代歌人集会賞)、『森へ行った日』(第30回ながらみ書房出版賞)。現在「塔」編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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