目次
1(長くて短いゆうぐれに;われらの狩りの掟 ほか)
2(放蕩娘の帰還;シュガーレス ほか)
3(桜のある風景;常世から ほか)
4(綺麗事;センチメンタルガーデン ほか)
著者等紹介
松野志保[マツノシホ]
1973年、山梨県生まれ。東京大学文学部卒業。高校在学中より短歌を作り始め、雑誌に投稿。1993年、「月光の会」(福島泰樹主宰)入会。2003年から2015年まで同人誌「Es」に参加(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆう
17
なぜ本を読むのかという問いに対しては、無限に回答があるように思う。ということは、極端にいうと理由はないということだ。その上であえて無限にある回答の方にフォーカスすると、私が生きるこの現実世界や、私が生きるこの私自身が、完全ではなく、美しくないから本を読むのだということが、その一つとしてある。現実世界で満たされぬ完全性や、美を本によって志向する。私がここ数年、少ないながら短歌を読み続けているのは、この辺りに動機がある。三十一文字という、ごく限られた言語空間だからこそそこに宿る完全性や美。2021/07/23
あや
15
松野さんは私が20代から30代初めにかけて所属した結社に所属されていて当時から松野さんのファンだった。モチーフが独特でリズムも良い。第2歌集を持っていないので第2歌集も読みたい。2022/05/23
rinakko
9
〈図書室の窓辺にいつも座していた君 思春期を晩年として〉〈月夜にはほのかに光る枯山水遂げざる謀反こそうるわしく〉〈心とはたとえば花びら一枚の重さに傾(かし)ぐ春の天秤〉〈たぶん世界の真ん中にある銀の耳わたしの悲鳴など、聞かないで〉〈まだ来ないアリスのために煮込まれてまた混沌に近づくスープ〉〈パレードを追いかけてゆけば永遠に祝祭の中で生きられるはず〉〈希う皐月水無月逝く前に世界を滅ぼす言葉をどうか〉〈魂を苛む千の方法を秘めて静もる王の図書館〉〈旧式のオーブンの中じりじりと焼かれる林檎と詩人の頭蓋〉2021/05/01
麺
2
偶然Twitterで目にした一首(「死ねと言えば死ぬ一人を従えて行けばいつしかあの世の花野」)がとても好きで、気になって購入した一冊。 著者の作風の背景等は何も知らないまま読んだのだが、主従や帝国などフィクションを詠んだ歌が多く、こういう短歌もあるのだなと興味深く読んだ。 イメージソングならぬイメージ短歌として、既存のキャラクターや歴史人物に当てはめて楽しむことができる歌集だった。2022/05/09
mascuma
2
二次関数、つぐみ、北極星 君が指し示すすべてを匣におさめた/ベッドからこぼれた腕 この夜の闇の深さを測るごとくに/ガラス器の無数の傷を輝かすわが亡きのちの二月のひかり/真夜中の厨に卵積まれいて殻の外にも内にも闇が/掌にふるえる小鳥 名付けよと言われたときの畏れは今も/四匹の仔猫を飼って名付けるの「あり」「おり」「はべり」「いまそかり」って/遠ざかる百鬼夜行の最後尾あれはまぎれもなく人だった/遠景に縄跳びの少女老いてなお描きつづける全き円を/もろともに堕ちたき天使一人を秘すギュスターヴ・ドレ版画集2021/04/25