目次
はじめに―ペストは宗教改革に作用した大きな要因のひとつであった
第1章 課題と“峻厳な神”の視点(課題と“峻厳な神”の視点から宗教改革を見る;人びとの心性の共有から見たルター)
第2章 “善き神”の支配と一二世紀・一三世紀の時代―ペストに先行する安定の時代(安定の時代がもたらした第一のもの―煉獄の誕生・普及;安定の時代がもたらした第二のもの―七つの秘跡の普及 ほか)
第3章 “峻厳な神”とドイツにおけるペストの流行(立ちこめる暗雲―“人を死に追いやる神”;一五世紀・一六世紀のドイツにおけるペストの周期性)
第4章 青少年期ルターの周辺とペスト―宗教改革の提起頃までのルターの半生(ルターの青少年期とペスト;落雷体験と修道士への道 ほか)
第5章 “峻厳な神”ゆえのルターの告解の秘跡の拒否(ルターとドイツ神秘主義;袋小路のなかのルターと改悛の困難さ―“峻厳な神”ゆえに神を愛せぬルター ほか)
おわりに―“峻厳な神”の支配
著者等紹介
石坂尚武[イシザカナオタケ]
1947年、千葉県生まれ。同志社大学文学研究科修士課程修了。現在、同志社大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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不純文學交遊録
7
図書館の新着コーナーで見つけた本(ナカニシヤ出版に新書があるとは思わなかった)。新型コロナウイルスによるパンデミックが世界を覆うなか、ルターの宗教改革はペストによる大量死がもたらした社会不安が背景にあると改めて問う。14世紀に発生したペストは一過性のものではなく、18世紀初頭に消滅するまで周期的に流行を繰り返した。地球が小氷期に入り、飢饉や凶作が頻発した時代でもある。ルターは人類に苦難をもたらす「峻厳な神」を愛せなかった。ルネサンスは宗教からの解放ではなく、むしろ救済を強く願った面もあった。2022/12/30
ikeikeikea
4
第1版との違いは、コロナ禍の新聞記事における黒死病の俗説批判が書かれた前書きのみとの事。安定した13世紀においては、神は《善き神》と観念されていたが、中世後期のペスト期においては、神の罰としての疫病という観念が広がり《峻厳な神》と神の観念が変化する。ルターも時代の子であり、その観念を共有しており、ルターにおける神は告解による執り成しが通じるはずがないほど厳しい神になってしまう。ペスト期による神観念の変化→峻厳ゆえに聖職者による執り成しや善行等の行為主義に心動かされない神→宗教改革が準備されるといった感じ。2021/08/20