内容説明
この写真は「私にとってしか存在しない」。謎めいたロラン・バルトの写真論を、不在の「温室の写真」を巡って読み解く、スリリングなバルト論。
目次
第1章 バルトの映像論(言語と視覚的イメージ;権力と心的イメージ)
第2章 バルトの視覚関係論(想像的な視点の移動―『ミトロジー』における視覚モデル;物理的な視点の交換―『エッフェル塔』における視覚モデル;視線の遮断―『記号の帝国』における視覚モデル)
第3章 写真によって演出される「バルト」―その消失点への旅(『彼自身によるロラン・バルト』における写真の分析;『明るい部屋』における“不在”の写真の分析)
第4章 他者の眼差しへの遡行―『明るい部屋』における視覚モデル(写真の表象する現実への遡行;写真の表象する過去への遡行)
著者等紹介
松本健太郎[マツモトケンタロウ]
二松学舎大学文学部専任講師。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。記号論・メディア論・映像論専攻。日本記号学会(理事、副事務局長)、日本コミュニケーション学会、日本映像学会所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
センケイ (線形)
6
記号論を考える上で必須と見えるロラン・バルトの思想を学べつつも、言語と画像の関係におけるコンテクスト、脱コンテクストの生じ方を知りえる点が興味深い。母国文化から遠く離れた日本文化の上では写真が翻訳しえないというが、本書ではこれを端的に言語と背景を知らないせいだと鋭く指摘しており、日本語のテキストで学ぶならではの意義を感じた。一応バルトの中では、翻訳しえない所に来ること自体意図を持っていたようで、そうした言語からの脱却をめぐる試行錯誤プロセスは、ある実体を理解したい私たちに方法論を示してくれたように思う。2020/03/11