出版社内容情報
ホロコーストに関する回想記や研究書は
多数あるなかで、本書は異色の一冊である。
生まれたばかりの乳飲み子を抱えた一人の母親が
「死に神を騙し抜いて生き延びた」話をことあるごとに
娘に語り続けた。
確執と絆の複雑に絡み合う戦後の母娘生活……
本書は著者イレーナの個人史の中で描き出される
母親の言葉を通して描き出された
“記憶に留めるべき悲劇の時代”の証言である。
また、ワルシャワ大学で日本語と日本文化を学び、
オックスフォード大学とシェフィールド大学で
日本語と日本文学を教える教師である著者の、
ある意味では日本人への“歴史認識”についての
メッセージでもある。
まえがき
プロローグ──墓碑に記録された生涯の旅路
戦 前
I 母のタルタクフを求めて
タルタクフ──ガリツィアのユダヤ人町
祖父アーロンと祖母スプリンツェ
家族の家 ほか
? 母の若い頃
若気の反抗
少数民族問題──ウクライナ人とユダヤ人
クラクフでの貧乏と友情 ほか
戦 争
? ソ連支配の幕間劇
幻滅
最初の疑惑
共産主義の天国〈父ロメクと母サルナの物語〉
帰郷 ほか
? ナチの占領──猛攻
ルヴフ、1941年6月──母性と戦争
ルヴフの飢餓
壊れた乳母車──ジュウキェフの物語
ルヴフ・ゲットーでの一か月 ほか
V ナチの占領── 一人打って出る
三枚の写真と一通の手紙
「お前はゲシュタポの手に落ちた」
──ジェシュフ・ゲットーへの旅
デンビツァの鉄道の駅(1943年春) ほか
? 解 放
ボレク村からの逃亡
クラクフ、1945年冬──最初の自由の味
最初の生存者たちの話 ほか
戦 後
? ドイツ人撤退以後のシロンスク地方
私の最初のクリスマス
ドイツ人仕立て屋のハンガー
失われた天国──極秘のパレスチナ旅行 ほか
? 母に見守られて──子供時代の光景
医療管理の下で
愛犬ボニー──私の幸せの瞬間
母親としての献身ぶり ほか
? 目撃した歴史
スターリンが死んだ日
波乱の年、1956年──最初の政治的転換
1956年のイスラエルでの夏休み
政治的自由化の弱点、
あるいは「私はいかにして母と別れたか」
? 父の保護の下で
成人を目指して
私の家出
イスラエルに母を訪ねる
新移住民
「お前はホロコーストの中では、
一日も生きていけなかっただろう」
? 旅立ち
私のオックスフォードへの旅立ち(1967年)
ワルシャワとオックスフォード(1968年)
父のアメリカへの旅(1968─ 69年)
母のポーランド退去(1969年)
ワルシャワに別れを告げる(1969年)
? そしてその後──エピローグに代えて
父の死亡記事
晩年の母の肖像
母だけの部屋
高齢化とトラウマについての省察
日本の読者のみなさまに──著者あとがき
訳者あとがき
イレーナ・パウエル[イレーナ パウエル]
著・文・その他
河合 秀和[カワイ ヒデカズ]
翻訳
早坂 眞理[ハヤサカ マコト]
翻訳
内容説明
乳飲み子を抱えた一人の母親が「死神を騙し抜いて生き延びた」話を、ことあるごとに娘に語り続けた一母親の言葉を通して描き出された“記憶に留めるべき悲劇の時代”の証言。ホロコーストに関する多数の回想記や研究書のなかでも異色の一冊。
目次
戦前(母の生地タルタクフを求めて;母の青春)
戦争(ソ連支配の幕間劇;ナチの占領―猛攻;ナチの占領―一人打って出る;解放)
戦後(ドイツ人撤退以後のシロンスク地方;母に見守られて―子供時代の光景;目撃した歴史;父の保護の下で;旅立ち;そしてその後―エピローグに代えて)
著者等紹介
パウエル,イレーナ[パウエル,イレーナ] [Powell,Irena]
1941年、ルヴフ市(現ウクライナ)で、ユダヤ系ポーランド人の両親の間に生まれる(旧姓ヤニツカ)。ワルシャワ大学文学部で日本語と英語を学び、オックスフォード大学大学院で修士号を取得、オックスフォード大学とシェフィールド大学で、日本語、日本文学を教授した
河合秀和[カワイヒデカズ]
1933年、京都市に生まれる。東京大学法学部卒、同大学院国際関係論修了、オックスフォード大学に留学、学習院大学で比較政治、東京大学でイギリスの政治(非常勤)を教授。学習院大学名誉教授
早坂眞理[ハヤサカマコト]
1948年、札幌市に生まれる。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了、ワルシャワ大学歴史学部およびポーランド科学アカデミー歴史研究所留学、ポーランド科学アカデミー歴史研究所客員研究員。茨城大学教授を経て東京工業大学教授。同大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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