羽ばたき―堀辰雄初期ファンタジー傑作集

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  • サイズ A5判/ページ数 227p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784779122842
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

宮崎アニメにも多大なる影響を与えた

堀辰雄の初期ファンタジー傑作が、

読みやすい新仮名遣いによって甦る!



多くの人が『風立ちぬ』『美しい村』『菜穂子』などの

サナトリウム文学を思い浮かべる

堀辰雄のイメージを一新するような、

モダンな姿で若者を魅了する東京浅草などを

舞台にした作品群の数々。

新興芸術派のひとりと目されていた堀の初期の作品には、

しばしば天使や妖精が出てくる。

空を飛ぶイメージと共に、水の中を漂い泳ぐイメージを

伴う作品も少なくない。

どちらにも軽やかな浮遊感があった。

堀辰雄の初期ファンタジーを彩る幸福感は、

現実と無関係ではなく、

むしろ現実の過酷さへの順応と防禦として

形作られたものだった。



「堀辰雄」のイメージを一新する、

静謐で摩訶不思議な浮遊感の世界に、浸ってみたい。

【収録作品】



「死の素描」



「羽ばたき Ein M?rchen」



「鼠」



「ある朝」



「夕暮」



「風景」



「眠りながら」



「蝶」

 

「あいびき」



「土曜日」



「窓]



「ネクタイ難」

  

「ジゴンと僕」

 

「水族館」

  

「眠れる人」



「とらんぷ」

 

「Say it with Flowers」



「ヘリオトロープ」

  

「音楽のなかで」

 

「刺青した蝶」

 

「絵はがき」



「魔法のかかった丘」





解説 天使と妖精たちのモダニズム  長山靖生

堀 辰雄[ホリ タツオ]
ほり・たつお
1904(明治37年)?1953(昭和28年)、日本の小説家。
代表作に
『風立ちぬ』『美しい村』『菜穂子』『大和路』など多数。

長山 靖生[ナガヤマ ヤスオ]
ながやま・やすお
評論家。1962年茨城県生まれ。鶴見大学歯学部卒業。
歯学博士。
文芸評論から思想史、若者論、家族論など幅広く執筆。
1996年『偽史冒険世界』(筑摩書房)で大衆文学研究賞、
2010年『日本SF精神史』(河出書房新社)で日本SF大賞、
星雲賞を受賞。
ほかの著書に『鴎外のオカルト漱石の科学』(新潮社)、
『「吾輩は猫である」の謎』(文春新書)、
『日露戦争』(新潮新書)、『千里眼事件』(平凡社新書)、
『奇異譚とユートピア』(中央公論新社)など多数。

内容説明

『風立ちぬ』などのサナトリウム文学のイメージを一新するように、堀の初期の作品には、しばしば天使や妖精が出てくる。空を飛ぶイメージと共に、水の中を漂い泳ぐイメージを伴う作品も少なくない。そのいずれにも軽やかな浮遊感がある…。新仮名遣いで甦る摩訶不思議な世界。

著者等紹介

堀辰雄[ホリタツオ]
1904(明治37)年12月28日~1953(昭和28)年5月28日。東京都生まれ。第一高等学校在学中に、芥川龍之介や室生犀星に師事。東京帝国大学文学部国文科卒業。1927年『ルウベンスの偽画』で本格的にデビュー。1930年、処女作の短篇集『不器用な天使』を出版、同年『聖家族』で文壇に認められる。この頃、肺結核を病み、軽井沢での療養が多くなった。軽井沢を舞台にした作品も多く残す。病臥中にプルースト、ジェイムズ・ジョイス、リルケなどの西欧文学の影響による新しい創作方法を考案する

長山靖生[ナガヤマヤスオ]
評論家。1962年茨城県生まれ。鶴見大学歯学部卒業。歯学博士。文芸評論から思想史、若者論、家族論など幅広く執筆。1996年『偽史冒険世界』(筑摩書房)で大衆文学研究賞、2010年『日本SF精神史』(河出書房新社)で日本SF大賞、星雲賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

はる

53
「風立ちぬ」などとは少し異なる印象の、堀辰雄のファンタジー短編集。夢と現実が曖昧な幻想的な世界。どこか死の影もちらつく。表題作「羽ばたき」は、ふたりの少年の耽美な物語で、長野まゆみさんの作品を彷彿とさせる。ふたりの名前はキキとジジ。この物語に影響を受けた角野栄子さんは「魔女の宅急便」でこの名前を使ったのだとか。最後の「魔法のかかった丘」が可愛らしくて好み。2022/05/15

ワッピー

24
堀辰雄、初読。「Ein Märchen」と訳題がついているが、日本語副題では「初期ファンタジー傑作集」となっているのにやや違和感。なんとなくメルヒェンは広義の民衆文芸のおとぎ話的ニュアンス、ファンタジーは創作的幻想小説と自分の中では区分していたためで、深い意味はありません。この時代にこのような世界を描いていた人がいるのかとビックリし、後書きで著者の状況を知って納得。堀は母、婚約者、師芥川の死、そして生活の困窮を包み込んで藤代清治の切り絵のような暗くも輝く世界を創出した。続けて堀の作品世界に進まなければ…2019/02/01

メタボン

23
☆☆☆☆ 堀辰雄初期のファンタジー集。堀辰雄の新潮文庫収録作品は全て読んでいたが、この小品集は知らない作品ばかりであり、堀辰雄の知られざる作風に触れられたのと、相変わらずの「夢見がちな青年」の気分を感じられて良かった。死の予感に彩られた「羽ばたき」、天井裏の空間を独り占めするために石膏の幽霊の作り話をし、それにいつしか亡母の顔を映す「鼠」、絵画が不思議な変遷をたどり画家の自画像が浮かび上がってくる「窓」、レズ的なエロチシズムが漂う「水族館」、軽井沢の不思議な小妖精のエピソード「魔法のかかった丘」など。2017/11/12

夏子

9
数年前にはまった時に粗方読んだと思っていたけれどまだまだこんなに知らない話(しかもファンタジー)があったのかと驚きました。繊細でキラキラとした世界観。本の装丁も素晴らしくて、本棚の一番目立つところに置いておきたい。2017/03/01

渡邊利道

7
昭和モダニズムを眼前に彷彿させる小品集。とにかく繊細で美しい。それだけでひとつの世界を作り出し、同好の読者を魅了させるこの凝縮の力はなんだろうと疑問さえ浮かぶ。師匠とも弟子とも違うこの稚気のある美の結晶は、同時代のさまざまなイメージを引き連れつつ誰にも似ていない。2017/04/09

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