内容説明
脇役に至るまで、完璧な人物創作を行なったヴァージニア・ウルフ。「意識」に焦点を合わせた手法により、内面を描出された登場人物たちには、ウルフが生きた同時代の文化や精神の受容が反映されている。作家が生きた時代の社会、文化、国家、人生や個人的な繋がりなど、ひとりの作家を取り巻くさまざまなものを考慮に入れ、ウルフの作品から当時の文化や社会の断片を探り出し「モダニティ」の姿を浮き彫りにする。
目次
1 『灯台へ』(ヴァージニア・ウルフの創作におけるG.E.ムアの思想的影響―『灯台へ』再読;『灯台へ』に見られる「有意味形式」理論 ほか)
2 『波』(『波』における母性についての一考察―スーザンをめぐって;自己への探求―『波』におけるロウダの存在)
3 『ダロウェイ夫人』(『ダロウェイ夫人』に見られるイングリッシュネスの内と外;『ダロウェイ夫人』に見るスノッブと英国社会―ヒュー・ウィットブレッドをめぐって ほか)
4 その他(『ジェイコブの部屋』における“固い物体”の意味;創作、女性参政権運動、サフラジェット―『自分だけの部屋』に読み取れるウルフの素振り ほか)
著者等紹介
奥山礼子[オクヤマレイコ]
栃木県生まれ。東洋英和女学院大学国際社会学部教授。日本女子大学文学研究科英文学専攻博士課程後期単位取得満期退学。専攻は、20世紀イギリス文学、女性文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅん
17
『ダロウェイ夫人』に関する部分を。イングリッシュネスや階級、アングロ・インディアンなど、小説に社会がどう反映されているかを詳細に解説していて、とても勉強になった。読みを豊かにしてくれる知識はありがたいです。テクスト内で「車椅子」がイングランド人を批判するときに使われるワードだなんて全然気付かなかったし、純粋なアングロサクソンであるはずのダロウェイ家の娘エリザベスが東洋系の顔立ちをしていることの意味も考えに及ばなかった。研究の蓄積と小説への誠実さが読み取れる良質な論考。2017/07/04
stray sheep
0
クライブベルの有意味形式論をウルフの読解に活かしたところこそ面白かったものの、全般にどことなく薄味だった2024/01/08