内容説明
日本が原子力技術を輸出する理由とは?国際社会における原子力技術の輸出の実態と外交目的が、豊富なデータ、資料によって初めて明らかとなる。
目次
国際政治への予期せぬ影響
平和的な原子力支援の定義とパターン
第1部 平和のための原子力(経済戦術と平和のための原子力;歴史的記録;核兵器と影響力;石油およびその他の動機;石油のための原子力支援?)
第2部 戦争のための原子力(誘惑の広がり;誰が核兵器をつくるのか?;国際機関は世界を安全にしてきたのか?)
結論 平和的原子力支援は何を教えてくれるのか?
著者等紹介
ファーマン,マシュー[ファーマン,マシュー] [Fuhrmann,Matthew]
テキサスA&M大学の政治学の准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おさむ
32
難解な学術書でしたのであくまで斜め読み。原子力技術を持つ国々が安全保障やエネルギー政策、外貨獲得などの理由で技術を世界に拡散させた全体像がよくわかりました。カナダがインドやルーマニア!などに支援していた事実は初耳でした。とりわけ冷戦時は米ソ両陣営が勢力拡大のツールとして活用。国際社会のリアリズムが垣間見えます。唯一の被爆国である日本は自ら核兵器保有に乗り出すような愚行をしていないことは当然ですが、日米同盟の核の傘の下にいる現実は全国民が自覚する必要があると思います。2016/06/29
coolflat
11
平和的原子力支援は核不拡散体制を構築する為にある筈なのだが、むしろ核拡散体制を構築する為のものになっている。原子力支援を行う最大の理由は核不拡散にあらず、同盟国へのてこ入れ、敵対国の牽制、自国のエネルギー安全保障の強化といった目的の達成であり、核不拡散の姿勢が疑わしい国にも技術を輸出してきた。因みに米英ソを除きどの核保有国も原子力支援がなされた後、核開発が計画された。原子力支援が不在であれば核開発を志向しても核保有には至らない。リビアがそれを証明している。核保有を志向する状況を原子力支援が作り出すのである2015/11/03
Mealla0v0
0
本文よりも先に國分功一郎の「解説」を読むべきだろう。概略はそれで掴める。アイゼンハワー演説によって構築された核の軍事利用/平和利用。しかし、後者を通じて前者は可能となり、原発の輸出は「原爆製造技術の輸出」=核拡散のリスクと為り得ることを、統計学を用いて計量的に示したのが、本書の特色だろう。原発輸出は、核拡散リスクを背負うことになるが、それを上回る利益――政治的、軍事的、経済的――が見込めれば行われて来たというのだ。こうした輸出は、原子力の被供給国が兵器化可能な科学力・技術力があれば、核保有に繋がると示す。2017/06/20