内容説明
交通事故から目覚めたアンディは、自分がゾンビになっていることに気づく。妻、娘と離れ、そのまま両親と同居することになったアンディは、他のゾンビたちと出会い、仲間になり、ゾンビになった自分を受け入れはじめる。なんとか人間たちとも共存しようとするが…。全編ゾンビ主観で綴られる、“脳のあるリビング・デッド”たちの「人生」と戦い、そして恋。現在世界同時多発中の「人間性を持つゾンビ」小説の究極型、待望の邦訳。
著者等紹介
ブラウン,S.G.[ブラウン,S.G.][Browne,S.G.]
1965年アメリカ、アリゾナ州生まれ。パシフィック大学卒業。1993年に初の短編小説Wish You Were Hereがレッドキャット・マガジンに掲載される
小林真里[コバヤシマサト]
1973年三重県生まれ。映画批評家・翻訳家・音楽ライター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中玉ケビン砂糖
38
「遅かれ早かれ、自分の手で困難を切り抜けなきゃいけないんだ」 帯にでかでかと「スカーレット・ヨハンソン主演で映画化!」と書いてあるのだが、ここ最近で似たようなテーマの映画があっただろうかと首を傾げる(もしかして『ウォーム・ボディーズ』とか?)。装丁が凝っている。小口を見ると黒地に白抜きで「A ZOBIE'S LAMENT」と書かれている。ゾンビ・パニックではなく、社会的な生活無能者としてゾンビが搾取されている荒んだ世界、という方向性は、割と稀なパターンなのではないだろうか。2014/11/04
みや
31
事故から目覚めるとゾンビになっていた男が人間社会で権利獲得を目指す社会派ホラー。自我を持つゾンビの一人称で展開する異色な作品だが、人間から容赦なく暴力を振るわれる彼らの存在は人種や国籍、外見などで差別を受けるマイノリティの者たちの叫びに通ずる。ゾンビがありのままのゾンビとして生きることを許せるか否か。極端な設定だからこそ、『自由』と『社会』はどこまで許容し合えるのかという問題が浮き彫りとなって突き付けられた。主人公に何度も苛立ったのは、私が彼の主張する権利を『我儘』だと感じて拒絶したからなのかもしれない。2019/09/12
くまちゃん
22
意思と思考のあるゾンビ。人間に蔑まれ、屈辱を受け、腐っていく自分に嫌悪感を抱きつつ隠れて暮す。なんて悲惨なんだ。可愛そうなゾンビ話かと思いつつ、後半からは「やっぱやっちゃったか!」。まあ、そうじゃなきゃゾンビじゃないよね。2019/10/03
メルル
22
特殊な状況ですが、これは社会的弱者に対する迫害の話でもあるよう。感情や記憶など知能が生者と同じように存在するゾンビに親しみを覚え、辛い思いをしているゾンビ寄りに気持ちが動いていたのですが、後半はやっぱりゾンビじゃないか…。逆に知能が怖い。これでは共存できない(T-T) ちなみに呪いやウィルスではゾンビになりません。死んだと思ったのに目が覚めゾンビです。ゾンビ化せずに安らかな眠りにつける方もいます。この状況は理不尽だ。「ゾンビーノ」という映画の雰囲気を期待していたけれどもっと真面目だった。2015/05/22
きゅー
15
死んだ人間がごく稀にゾンビとして蘇生するようになった世界。蘇生したゾンビは生前の記憶や、感情も持っているが、一切の権利が剥奪されている。 全編ブラックコメディに満ち溢れており楽しい。冒頭では弱々しかったゾンビが、強くたくましく変貌する姿を見れば、一種の成長物語としても読める。バカバカしい設定だなと思って読み進めていたのに、そのうち割と真面目なゾンビ小説なんじゃないかと思えてくる。前半より中盤、中盤より後半とだんだん盛り上がってくるのも素晴らしい。なかなか得がたいゾンビ体験だった。2016/05/17
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