内容説明
戦後漫画の出発点『新宝島』の“核心”が新資料発掘により初めてベールを脱ぐ!手塚資料研究第一人者の著者が40年の研究成果のすべてを注いだ、注目の書。
目次
第1章 エポックメイキングと称されるべき『新宝島』(初めに「スピード太郎」ありき;「新宝島」の革新的な実験―「スピード太郎」の変貌;一センチのもつ意味?;衝撃の出逢いその証言と手塚治虫の不安 ほか)
第2章 手塚漫画の原点にあったものたちと映画的手法のそれからの展開(嗚呼「突喊居士」…沈黙の突貫;無字幕のコマ漫画;「突喊居士」から「親爺教育」へ…勝手なことを言う群衆?;「親爺教育」と「突喊居士」…記憶のなかの合体? ほか)
著者等紹介
野口文雄[ノグチフミオ]
1945年、埼玉県川口市生まれ。少年時代より漫画と映画に明け暮れ、現在にいたる。主な漫画関連の仕事としては、75年より80年にかけて「虫の標本箱」刊行会責任者として、手塚治虫の初期単行本20冊の復刻企画に参画(青林堂刊)。同書の98年から2000年にかけての追加企画(ふゅーじょんぷろだくと刊)にも携わる。その他、80年、「手塚治虫初期漫画館」(名著刊行会)の監修・解説、「付録漫画傑作選」(国書刊行会)の企画・解説も担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kokada_jnet
3
2009年に小学館クリエィティブから『完全復刻版 新寶島』が刊行されたたが。これはその2年前に出た「元来『新宝島』復刻のための企画書だったもの」が発展して著書になったもの。前半は、従来あいまいだった「映画的手法」を厳密に分類し、『新宝島』の画期性を論じる。後半は手塚漫画の群衆描写などに、手塚が体験した映画・漫画などがどのように影響したかの論。いずれも、貴重な図版、多数。2014/04/13
kei-zu
1
アメコミは読み飛ばしてはいけない。一枚絵に描かれた絵をじっくり眺めながら、びっしり書き込まれた吹き出しの文字を読むのだ。江戸時代の黄表紙もこれに近い。 では、日本の漫画の「文法」を作ったのは誰か。手塚治虫であるわけだが、手塚の「新宝島」は何が画期的だったのか。 本書では、映画的な時間の流れをコマに表現したと説明する。同一シーンで何コマも続けて人物の動きを描くのは、確かに「映画のフィルム」のようだ! であれば、手塚が生涯かけてあれほどアニメーションにのめり込んだ理由も見えてくる。2020/11/20
とんび
1
新宝島をキーとして、非常に丁寧に手塚治虫の漫画技術とその革新性について書かれていて、興味深く読めた。図版が多いのも素晴らしい。2010/05/09
leopard gecko
0
この本は新宝島がどうこうという話よりも、豊富な資料がとにかく素晴らしい。原稿と描き版の対比や未使用原稿などの資料がとにかく多く、手塚治虫の初期のタッチがどういうものだったのかを知るのにうってつけ。「地底国の怪人」や「有尾人」が描き版でなく写真製版だったらどれほど素晴らしいものになっていたことか・・・。初期の手塚治虫は絵が下手だと思っている人はこの本を読むべし。2013/05/01