内容説明
ニューヨークのユダヤ教超正統派“ウルトラ・オーソドックス”のコミュニティに生まれ育ったデボラは、幼いころから厳格な戒律にしばられた生活に息苦しさを感じていた。正しい服装、言葉を交わす相手、読んでいい本まですべてが“しきたり”で決められ、女性は人前で歌うこともできず、結婚後は髪を剃ってカツラを被ることを強制される―不自由と監視の目から逃れ、自由と自立を求め、脱出をはたした勇気ある女性の回想録。
目次
1 秘められた力を探して
2 無垢なる日々
3 知の目覚め
4 わたしの家柄の低さ
5 目的のために
6 闘う価値はない
7 野心の代償
8 正義は勝つ
9 反旗を翻す
著者等紹介
フェルドマン,デボラ[フェルドマン,デボラ] [Feldman,Deborah]
ニューヨークにあるユダヤ教の「超正統」、ハシド派のコミュニティに生まれ育つ。故郷を去るまでの半生を綴った『アンオーソドックス』は、NY Timesベストセラーリストに入り、センセーションを巻き起こした。自伝をもとにしたリミテッド・シリーズはNetflix配信中。現在はベルリン在住
中谷友紀子[ナカタニユキコ]
英米文学翻訳家。神奈川県生まれ。京都大学法学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆのん
85
衝撃的な本。静かで控えめな文章の中から自分が自分でいる事の力、自由への強い渇望が心の中へ力強く入ってくる。生まれながらにしてユダヤ教のコミュニティで暮らし、その教えの元で生活してきた著者。愛を感じる事も、心に平安が訪れる事も無く過ごした子供時代。結婚して出産し、大学に通いシングルマザーとなる。憧れの外の世界とはいえ、世俗的な事は何も分からず、頼れる親族もいない中であっても真の幸せを掴もうとする強さ、そして過去の自分を受け入れバッシングにも負けずに声を上げる強さは凄まじい。沢山の人達へのエールとなる本。2021/03/05
はやしま
33
NYのユダヤ教の超正統派コミュニティで生まれ育った女性の回想録。両親に問題があり敬虔な祖父母のもとで育てられる。子どものころや結婚前は、葛藤はあってもコミュニティにいることの安堵感も窺え、超正統派の日常や宗教行事の描写も楽しそうなところも。17歳でお見合いし19歳で子供を産むが結婚生活に違和感を覚え、大学に通い、離婚し、ユダヤ人コミュニティを飛び出す。その時間は子ども時代の回想とは異なるスピード感があった。書くことで彼女自身が救われているようだった。ネットフリックスで配信されたというドラマ版も見てみたい。2021/08/08
りらこ
28
主人公が育った環境は、信仰を持ちその価値観のなかで生活をすることを良しとし、はみ出した考え方を良しとしない、はたからは極めて特殊だと断罪しても良いほどの前近代的だ。 その価値観からの脱出は、主人公が本当の意味で自立することで、環境や過去との訣別=遺書と述べられている。 自分が知らない世界で、そのようななかで窮屈な思いをしている人たちがいることは、想像にかたくない。しかし現実として向き合うことから私たちは逃げているのではないか。何もできずに眺めているだけの存在である自分にも絶望感を持った。 2021/06/29
tom
24
ブルックリンに住むユダヤ教超正統派ハシド派の女性の手記。家族と家族を取り囲む閉鎖的社会システムからの脱出の記録。女は穢れている。女は男に従うもの。産む機械。英語は穢れた言語。読むのは禁止。学校で習うのはヘブライ語。結婚は親が決める。髪は不浄、結婚したら剃り落とし、カツラをかぶる。信仰の篤さ(極端さ)と経済力によって、社会的ランクが決まる。そして周囲の目を気にしなければならない暮らしがある。著者はこの社会から無事に脱出したけれど、家族・親族は、彼女を身内の恥、堕落した人と非難する。そういうものだろうと思う。2023/04/15
だいだい(橙)
24
小説ではなく、著者の半生を描いた実話。ニューヨークのブルックリンに正統派ユダヤ教徒たちが住むコミュニティがある。戒律の厳しいコミュニティで祖父母に育てられ、17で見合い結婚することとなったデヴォイラ。叔母や祖母という周囲の女性が当然のように戒律に縛られた人生を生きていく中、彼女は祖父母を敬愛し、神への信仰は持ちながらも自由を希求する。現代のアメリカにこんなコミュニティがあることへの驚き。そこを離れて内情を暴露した彼女に対するコミュニティの仕打ちは想像するに余りある。彼女の勇気に拍手を送りたい。2021/04/17