内容説明
ドストエフスキイ文学の根底を貫く新約聖書の意味とは何か。主人公の老婆殺しから始まる表の物語と、その下を流れる「ラザロの復活」をめぐる深層の物語の二重構造に着目し、『罪と罰』に構造的に織り込まれた聖書の意味を開示することを通して、ドストエフスキイ文学の最深部の謎に光をあてる。西欧近代の発展途上で早くも近代資本主義に内在する暴力を見抜いたドストエフスキイの実存を賭けた「復活」の意味の問い直しに、150年の時空を越えて深く応答しようとする著者の稀有で精緻なドストエフスキイ論。
目次
第1章 『夏象冬記』から『罪と罰』へ―バアルとバビロン、そしてラザロ
第2章 「春の夢」―隠されたラスコーリニコフの「前史」
第3章 「春の夢」から「黙示録」へ―「聖と俗」の二重構造としての『罪と罰』
第4章 「ラザロの復活」とソーニャ―マルメラードフの腐臭と復活
第5章 スヴィドリガイロフ―「いかさまカルタ師」の裁きと復活
第6章 ラスコーリニコフ―復活の曙光
著者等紹介
芦川進一[アシカワシンイチ]
静岡県生まれ。東京外国語大学フランス語学科卒。東京大学大学院人文科学研究科比較文学比較文化博士課程修了。津田塾大学講師を経て、現在河合塾英語科専任講師・河合文化教育研究所研究員。専門はドストエフスキイ。特にそのキリスト教思想の研究を中心とする。ドストエフスキイ研究において、その重要性が長い間指摘されながらもなおざりにされてきたキリスト教思想を、聖書テキストの厳密な検討の作業から明らかにすることを目指す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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