内容説明
第一次世界大戦百周年をめぐる世界的動向を踏まえた視座から21世紀英語圏文学・文化における大戦の記憶の諸相を明らかにする。ここに起こっている現象は、ナショナルな枠の内部で形成・継承されてきた戦争の記憶を批判的に乗り越えるための21世紀的想像力を養成してくれるはずだ。
目次
序章 百年の記憶、百年目の責任
第1章 「イギリス」永遠のウィルフレッド・オウェン
第2章 「イギリス」最後のトミー、すべてのトミー―ハリー・パッチが語る戦争の記憶
第3章 「イギリス」“大戦世代”不在の時代に―キャロル・アン・ダフィ「ラスト・ポスト」と傷の記憶/記憶の傷
第4章 「ベルギー」三万回の「ラスト・ポスト」が鳴り響くとき―メニン・ゲートという記憶の場/観光の場
第5章 「カナダ」癒やしと和解への長い旅路―ジョゼフ・ボイデン『三日間の旅路』とカナダ先住民の「闘い」
第6章 「オーストラリア」歴史のトリアージ―トマス・キニーリー『マルスの娘たち』における歴史記述の倫理
第7章 「アイルランド」異教徒たちだけが存在する世界で―セバスチャン・バリー『遥かなる路』における「よそ者」たちの記憶
第8章 「パキスタン」二十一世紀のヘロドトスたちとスキュラクスたち―カミラ・シャムシー『すべての石に宿る神』における「忠誠」
第9章 「イギリス」二十一世紀の『イン・メモリアム』―セバスチャン・フォークス『かつて我が心が鼓動を打っていた場所』における記憶の美学
終章 『土曜日』の気分、『秋』の気配、未来への松明
著者等紹介
霜鳥慶邦[シモトリヨシクニ]
1976年、新潟県生まれ。大阪外国語大学大学院言語社会研究科博士後期課程修了。博士(言語文化学)。福島大学助教授・准教授を経て、大阪大学大学院言語文化研究科准教授。専門は、英語圏文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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