出版社内容情報
斬新な切り口と強烈な筆致で読者未体験の世界を切り拓き話題を呼んだ『アメリカ文学史』(小社刊)、
1983年すばる文学賞受賞作『虹のカマクーラ』、最近では『松谷警部と目黒の雨』『松谷警部と三鷹の石』
『松谷警部と三ノ輪の鏡』(東京創元文庫)を発表し作家として活躍する平石貴樹。
小説家・平石貴樹ならではのセレクションと名訳でお届けする珠玉のアンソロジー!
平石 貴樹[ヒライシタカキ]
内容説明
アメリカ小説の魅力がぎっしり詰まったベスト・アンソロジー。
著者等紹介
平石貴樹[ヒライシタカキ]
1948年、北海道函館生まれ。アメリカ文学者、作家。東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
109
米文学の短編選集。読みたいと思っていた作家ばかりの作品が収録されていたのが嬉しい。19世紀のポーから20世紀のカーヴァーやブローティガンまで時代順に並べられ、文学史の流れも味わえる。ポーが強烈。死にゆく人への催眠術という題材が冷静に語られ、形容しがたい恐怖が植え込まれる。メルヴィルとロンドンは既読だが別訳を楽しめた。訳者のバートルビーの見解も興味深い。フォークナーの子供視点からの差別のある日常、マラマッドの人生観、ボールドウィンのジャズ演奏の空気感が印象に残る。アメリカ人の剥き出しの心を読んだかのようだ。2021/05/04
ずっきん
78
ポーからブローティガンまで10+1篇。一日1〜2篇をじっくりと読んでいく。メルヴィル『バートルビー』ロンドン『火をおこす』は、既読でも震えて悶えてしまう。傑作たる所以なんだろうな。ジュエットの『ウィリアムの結婚式』は関連作品を全部読みたい。フォークナーの筆力凄い。なんといってもボールドウィン。繊細なタッチにして、足下から熱風が吹いてくるような。ああ、くそ。言葉に出来ない。肌がざわめく。うねる行間に涙が浮く。我に返って息を吐いた後は、この余韻がいつまでも消えませんようにと祈るばかり。2021/05/11
ワッピー
38
選り抜かれたアメリカ文学の傑作10選プラス1。いずれ劣らぬ珠玉の短編ばかりで、不勉強のワッピーにはありがたい本でした。自分の自由を遂行することにアグレッシブなアメリカ人の中で、【しないこと】にアグレッシブな不条理劇「バートルビー」、何気ない会話と最後の逆転「ローマ熱」、酷寒の中で感覚がぷつぷつ切れていく恐怖「火をおこす」、スラムの生活感と極上に苦いジャズ「サニーのブルース」が印象的。目的の「ウィリアムの結婚」は、「とんがりモミ~」で内気さを十分にアピールされたウイリアムが一体誰といつの間に?という事情を⇒2020/11/03
藤月はな(灯れ松明の火)
33
信頼していた隣人が亡くなった夫の不倫相手だったことを病床で知った女性とその隣人のエゴが浮き彫りになる「ローマ熱」のネチネチとやり合ってからの最後のエゴとも諦めとも獲れる勝利的一言に胸に風穴を開けられた気分になりました。南部の暗がりを抉り出したフォークナーの「あの夕陽」で売春の罪に怯える家政婦がなぜ、子供たちを誘拐同然で自分の家に連れ込んだのかが分かる最後にはゾッとさせられる。『マンディンゴ』・・・。しかし、正反対の生き方をした兄弟が理解し合えた一瞬を描いた「サニーのブルース」に心が温かくなりました。2016/07/31
トムトム
21
ベスト10に恥じない名作ばかりでした!有名作家、タイトルが有名な話、聞いた事あるけど読んだことのなかったお話など。バートルビーってこういう話だったんだ!2019/10/02