内容説明
酒によって人間関係、やがては町までもが確実に崩壊してゆく十年を描く。小さな村シダーヴィルにできた居酒屋兼宿屋「鎌と麦束亭」に投宿した語り手が事件に遭遇する…。19世紀禁酒小説のベストセラー、待望の全訳登場。
著者等紹介
アーサー,T.S.[アーサー,T.S.][Arthur,Timothy Shay]
1809~1885。アメリカの作家。Married and Single(1843)をはじめ、100点近くの教訓的な通俗小説や小冊子を書いた
森岡裕一[モリオカユウイチ]
1950年生れ。大阪大学大学院修士課程修了。大阪大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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lico
2
19世紀アメリカで禁酒運動を大いに盛り上げることになった一冊。どうせ作者の独断と偏見が混じったお酒論が展開されるんだろうなと思いながら読み始め、実際その通りの小説だったのだけど、これが予想外の面白い。登場人物はテンプレート的だけど、ストーリーの語り方がよかったのかするする読めた。19世紀アメリカの発展してるのか遅れているのかよくわからない雰囲気が楽しめて満足。欲を言えばモーガン家の出番を増やしてスレイド家と対比する形で物語を進めてほしかった。途中でフェードアウトして最後だけ出てこられても今一のりにくい。2016/01/29
azimuth
2
○なによりも構成がよい。村に数年おきに訪れる宿泊者を語り手に設定することで、十年間にわたる村の「不可逆的かつ漸進的に進行する」変化がうまく描かれている。物語中のハイライトである二組の親子、物語曲線と真逆の動きをする某人物にもう少し焦点をあててほしかったな。○飲酒年齢制限の目的のひとつは、「制限されるべきものである」という意識を植え付けることなのかもなと思った。○最後のほうの馬丁の台詞。環境が変わらなければ、その中の人間は変わることができないって、甘えのように見えて真理かもしれない。2011/10/28
くろひきか
1
これは面白かったし、楽しめました。誰も読んでいないようなのでしっかりとした感想を。禁酒法が制定される前夜が舞台のアメリカの田舎町の物語。派手な物語でもなんでもない、ただ息遣いを感じることができる。こういうタイプの本は残っていって欲しいだと思います。僕の中では非常に満足できた作品でした。