内容説明
3・11以後を生きる日本と日本人に贈る、暮らしの中から思索を重ねた哲学者の渾身のメッセージ。国家、歴史、教育、憲法、家族、年を重ねること…“不安”を生きる私たちへ、大きな物差しで“日本”を見据えてきた哲人の発言集。
著者等紹介
鶴見俊輔[ツルミシュンスケ]
1922年東京生まれ。哲学者。1935年東京府立高等学校尋常科に入学するが翌年退学、同年府立第五中学校に編入するも翌年退学。不良少年として生きる。1937年15歳で渡米、ハーヴァード大学哲学科でプラグマティズムを学ぶ。1942年、FBIによってアナキスト容疑で逮捕されるが、留置場で卒業論文を書き上げ卒業。同年、日米交換船で帰国。帰国後すぐに、ジャワ島・ジャカルタ在勤海軍武官府に軍属として勤務。1946年、雑誌「思想の科学」創刊に参加
冨板敦[トミイタアツシ]
1962年愛知県一宮市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、1985年筑摩書房に入社。『鶴見俊輔集』の編集を担当。1994年退社。現在、フリー編集者、大東文化大学法学部法律学科非常勤講師。元日本ジャーナリスト専門学校講師。調理師の免許も持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
24
人間臭いなあ、と思う。自らを弱い存在であり悪人であり、不完全な人間として位置づけること(意地悪く言えば、これはあらかじめ自分自身を守るガードを捨てて物事を好きなように言おうとする「ノーガード戦法」でもある)。鶴見俊輔の思想は、彼自身はそうは認めなかったかもしれないが「保守主義」であり私たちにも馴染み深い温もりを備えたものであったと思う。この本に収められている「語録」でもその片鱗は充分に伺い知られる。学ぶことも大事だが、その学んだものを「unlearn」(脱学習?)して自らの肉体として血肉化することも重要だ2022/02/13
壱萬参仟縁
21
俊輔氏独自の辞書。 一番病とは、世間を師とする。 優等生は世間、先生を師とする ようになっていくと、具合が悪い。 世間を師としてはいけない。 創造は、一番だから生まれるという ものじゃないんだよ(『かくれ佛教』 2010年初出、10-11頁)。 学問とは、問いが問いを生み、 問いがまた問いを有無という形で 歴史を記述することが可能。 常に疑いの留保をつけない断定は 無理(『歴史の話』2004年初出、 27頁)。 2014/05/06
秋 眉雄
17
手っ取り早く鶴見さんに触れようと思い、手にしたわけですが、こういう色々な本からの抜粋・抜き書きみたいなものはどうも今の僕には合わないようでした。やっぱりその前後が分からないと、ただでさえ理解力の乏しい僕のようなものには理解が追いつきません。きちんとまとまったものを幾つか読んでから、この本に立ち返ってみたいです。2020/12/20
fonfon
7
編者の富板敦氏に乾杯!よくぞここまで丹念に読み込まれ、ひろってこられたと、感激です。手にはいりにくいSUREのセミナーシリーズからの引用も多い。あの、ぎょろっと目を剥いて一言一言くっきりと発語される声が聞こえてきそうな本。たっぷりと、鶴見さんの思索の飛翔、が堪能できます。若いひとびとにぜひ読んでいただきたいです。売れるといいなあ!ひとつ引用しますね。「気配をさぐって気配を伝える。柔道から剣道までみんなそう、それが日本文化だと思う。もう一度どういう風に気配の感覚を取り戻すか、気配を探り当てる道2011/12/01
Bartleby
4
著者のことばにはいつも血が通っているのを感じる。それは絶えず著者が自分の経験を顧みながら自分なりの定義を作りつづけてきたことにあると思う。この本は今までの著作の中から概念の定義に相当するような文が集められている。著者の定義を参考にしつつも自分なりの定義集を作ってみたい。2011/11/25
-
- 和書
- 闇色のソプラノ 文春文庫