出版社内容情報
――「杉森くんを殺すことにしたの」
高校1年生のヒロは、一大決心をして兄のミトさんに電話をかけた。ヒロは友人の杉森くんを殺すことにしたのだ。そんなヒロにミトさんは「今のうちにやりのこしたことをやっておくこと、裁判所で理由を話すために、どうして杉森くんを殺すことにしたのか、きちんと言葉にしておくこと」という2つの助言をする。具体的な助言に納得したヒロは、ミトさんからのアドバイスをあますことなく実践していくことにするが……。
傷ついた心を、取りもどす物語
内容説明
わたしはどうしてもあの子を殺さなきゃいけない。傷ついた心を取りもどす物語。
著者等紹介
長谷川まりる[ハセガワマリル]
長野県生まれ、東京育ち。「お絵かき禁止の国」で第59回講談社児童文学新人賞佳作を受賞、同作で講談社よりデビュー。『かすみ川の人魚』(講談社)で第55回日本児童文学者協会新人賞受賞
おさつ[オサツ]
イラストレーター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青猫ノラ
128
予想もつかないミステリーの渦に巻き込まれたかと思うと、後半はじっくり考えさせるストーリーに。ネタバレありの解説はいったんスルーして、真っさらな状態で読んでほしい。プロットが秀逸で、普遍的なテーマを扱っているから、中高生だけではなく、大学生や一般読者にも紹介したくなる本。2023/10/15
美紀ちゃん
115
タイトルが気になり読んでみた。びっくりした。ミトさんの存在が大きい。自傷についても詳しくて勉強になる。リスカしている人、佐藤さんの説明がわかりやすい。悲しみの居場所探しの物語。人は大切な存在を失うと悲しむだけではなく怒りや非難や解放感や罪悪感など様々な感情が生じる。心の揺れ動きのなかで自分の気持ちをぶつけ悲しんだり偲んだりしながら失ったことを受けとめ日常に戻っていく。それが喪。ヒロが再出発できたのは新しい友達のおかげ。今、悩んでいる人や悩んでいる人が身近にいてどう関わったらよいのか迷う人は共感できる。2024/03/02
ユースケ
111
主人公の「ヒロ」は高校1年生の女子高生。 「ヒロ」には友人の「杉森くん」を殺す理由が15個も有り、今、そして過去を振り返りながら、来たるべき時に向けて、着々と準備を進めていく・・・。そう、これを児童文学作品とするには、あまりにも恐ろしい物語なのである。 ・・というわけではないので、いま深い悩みを抱え、人生にもがいている方はもちろん、どちらかといえば、周りに気を使うことのできる余力のある方に読んで欲しいと思った。2025/03/16
岡部敬史/おかべたかし
106
タイトルに惹かれて読んでみましたが、大傑作。マイベスト児童文学のひとつに刻まれました。タイトルとちがって読後感は実によい。思春期の少女の葛藤が痛快かつ優しく描かれています。少し重いテーマを扱っていますが、面白く読ませる。これはすごい作家さんです。みなさんもぜひ2024/01/12
nobby
85
某所つぶやきでのオススメから迷わず手に取った良書♬児童書にして衝撃のタイトルに戸惑う...いざ読み始めた欄外には「もしもあなたが悩みや不安を抱えてこまっているときには、相談できる場所があります。」確かに『杉森くんを殺すには』理由や手段がいる。それを高校生の結愛が掘り下げていく日常と、徐々に明らかになる現実が重なっていく展開が実にハートフル。多感な時期の痛くも微笑ましくも様々な感情を優しく描く様は、なるほど子供達向け、いや大人へも充分に響くと思う。「いっぱい依存先あれば、それは自立」ああ...それは核心だ。2024/12/16