出版社内容情報
――この光はきっと、みんなにも届いているにちがいない。なぜなら、ここはみんなの世界だから。そして、そこは、双葉たちの世界でもあるのだ。
視覚支援学校に通う佑は、この春から中学1年生。新しいクラスメイトも増え、寄宿舎での生活もはじまったが、佑の気持ちは晴れない。小学部から親しくしていた双葉が、ある事件をきっかけに学校に来なくなってしまったからだ。何度連絡をしても、双葉からの音信はない。道しるべのような存在だった双葉を失ってしまった佑は、授業や白杖の訓練に身が入らない状態が続いていた。
いっぽう双葉は、事件の際にぶつけられた悪意に満ちた言葉への衝撃から、家の外に出ることができなくなっていた。「目が見えない人はひとりで外を歩くべきじゃない」と思っている人が、この世界にいることを知ってしまったからだ。そんな双葉を心配した母親に「伴歩・伴走クラブ」という団体を紹介された彼女は、クラブの活動を見学に行く。そして佑も、双葉に会いにいくという目標のために、苦手だった白杖の訓練に挑戦しはじめる……
ふたりの主人公が、それぞれの葛藤を乗り越え、ふたたび世界に踏み出すまでを描いた物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
87
児童書。YA。寮制の視覚支援学校の中学1年、祐(たすく)は小学校から一緒だった双葉(ふたば)が学校に来ないことが気がかり。双葉はひとりで外出中に、ぶつかった見知らぬ男に暴言を吐かれ、怯えて家から出ることができなくなっていた。双葉に支えられ双葉を頼りにしていた祐は、晴眼者(目が見える人)が怖い世界が怖いと感じるようになる。祐は最初、新しいクラスメイトや先生と馴染めなかったが、訓練を重ねだんだんと世界を広げていく▽視覚障碍者の世界を知ることができる良本。2022年刊。2023/01/27
美紀ちゃん
78
いい話だった。視力がない人達の世界がとても良くわかる。主人公は中学生。視覚支援学校。視野がある人のことを「晴眼者」と呼ぶ。白い杖を持っていても持っていなくても外を歩くのが怖い。 晴眼者の悪意に晒されたり迷惑だと言われたり言われなくてもそういう態度をとられるのが怖い。 晴眼者不審。白杖歩行訓練は、本当に大変で何度も挫折しそうになる佑。目標ができて訓練で頑張りきったときのキラキラする気持ち。感動した。双葉も事故後に引きこもってしまったが優しい前向きな母親の助けで大会にも出場できて良かった。爽やかな読後感。2022/12/13
がらくたどん
70
視覚支援校を舞台に外出先での理不尽な悪意で外出できなくなった少女と自立への準備に戸惑う少年が恐る恐る踏み出した輝くような一歩を真の共生とは何かを問いながら丁寧に描いた物語。見えない彼らは見える中学生とは違う内容や方法での勉強や遊びがあるのはもちろんだけど、友達関係のドキドキも何かが巧くできない苛立ちも社会への不安も「一緒じゃん」と思える事もたくさんある。「支援」の文脈ではなく「手で見る世界」と「目で見る世界」で分かった事を合わせて一緒に世界を知れば最強かも?とどの立場の読者にも思わせる点が斬新で素敵だ。2023/01/05
papapapapal
66
めちゃくちゃ良かった〜! 1ページ目から物語の世界に引き込まれ、ラスト20ページは彼らの成長が眩しすぎて泣く…! 親元を離れ寄宿舎で暮らす視覚支援学校の中学1年生。理不尽な仕打ちで心を砕かれてしまった双葉を案ずる佑が主人公。無邪気で安心な世界から荒波狂う世間へと漕ぎ出す時の思春期らしい心の揺れ動きがヒリヒリ…怖いよね、嫌だよね。。 彼らが見ている世界を、自分に落とし込んで感じる事ができた。 モチーフは実際に起きた悲しい事件…たくさんの人に知ってもらいたい良書。2023/01/08
b☆h
38
去年読み友さんのレビューで知った一冊。何度も心が揺さぶられた。分からない世界を少しでも想像することで、色んな人が生きやすくなるんだと思う。白杖を使っての場面では、少し気持ちが分かる。もちろん私の疲れなんてきっと何分の一だとは思うけど、情報が多すぎて疲弊する感覚は身近なものだ。昔小学校で聞いた、障碍者を海外ではチャレンジャーと呼ぶという話を思い出した。自分の中の境界線を出来るだけ作らずに生きていきたいと改めて思う。自分の見える世界が全てじゃない。それを教えてくれる読書がやっぱり大好き。2024/03/17