出版社内容情報
佐和 みずえ[サワミズエ]
著・文・その他
内容説明
ロシア革命からのがれるようにして中国、アメリカへ、そして関東大震災後の日本へとやってきたロシア人のモロゾフ一家。ようやく神戸に腰を落ちつけ、チョコレート店を開店させました。ところが、チョコレートづくりには不向きな日本の猛暑、亡命者に対する不信、太平洋戦争による材料不足と店の焼失、戦後の混乱など、次つぎにおそってくる困難に直面します。それでもあきらめずに家族で立ちむかい、みんなを幸せな気持ちにさせる本物のチョコレートをつくりつづけ、たくさんの人びとに届けました。ロシア革命から、百年がすぎました。世界や日本で起こったできごとを追いながら、一粒一粒のチョコレートづくりにすべてをささげた、モロゾフ一家を描きます。
目次
1 革命の嵐
2 脱出の旅
3 ハルビンの家
4 新天地アメリカ
5 神戸へ
6 開店
7 愛のバレンタイン
8 戦争
9 チョコレート再開
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
34
バレンタイン用に借りてきたお話です。ロシア革命で故郷を追われた一家が放浪の旅ののち日本へ…。ユーハイムの物語も素晴らしかったけれど、モロゾフの物語も素敵です。新政府を認めない限り「ソビエト」には戻れない…そして「ホワイトジャップ」とよばれたこと…様々なエピソードを読みながらつくづく戦争はイヤだなあ、と感じました。彼が生涯無国籍で通したというエピソードと、絶対韓国籍を取ろうとしない在日の友達のご両親のお気持ちを思いました。2022/03/03
まる子
23
神戸が本社の洋菓子店Morozoff(モロゾフ)。このお店の創業者ワーリャの伝記。ロシア革命から逃れて、中国やアメリカ、そして関東大震災後の日本へ。そこで日本の高気温や日本人に合うように苦難を乗り越えて作られたチョコレートは、ワーリャの妻の考案により日本に2月14日のバレンタインデーを広めた。第二次世界大戦中とその後の幾度の困難にあいながらも、なぜか必ず一家を助けてくれる人がいた。日本でチョコレートをつくりながらも無国籍のままの彼らが残したものは大きな企業として成長だった。2024/10/03
いくら丼
16
児童向けの伝記ですね。こちらもてきとーに手に取った本ですが、参考文献がめっちゃ川又一英氏やんけ……この方こんな本も書いていたのか。変革期に国を追われ、生きるために必死で働きながらも、活路を見出すべく、考え、試行錯誤を繰り返したモロゾフ一家。チャレンジの数が凄まじいし、粘り強さが半端ない。疲れ切った夜の勉学は決して効率的ではないが、それでも続ければ、努力は糧になっていく。……凄く、励ましになる。耐え抜く時に耐え抜いて、努力は花開かせられるのだ。ロシア革命から終戦後の日本、時代の姿が浮かび上がって貴重でした。2022/11/06
ののまる
16
帝国ロシアから逃れ、中華民国(ハルピン)へ。そしてアメリカ移住ののち日本にやってきたモロゾフ一家。難民と言う苦難の一生のなかで神戸に「モロゾフ洋菓子店」をつくり、日本に初めて「大人のチョコレート」を広めました。息子のワーニャは日本でバレンタインデーを考え出した人。そして彼はソ連籍にも日本籍にもならず、一生を「無国籍」で通しました。神戸にあるお墓はチョコレート色をしているらしいです。モロゾフの一粒チョコレートを買って大事に食べたくなった!2019/10/19
今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン
15
モロゾフ本は多分これで全部読んだはず。日本に来るまでの苦労が一番詳細に言及されていたかも。戦後の話は利権がらみのきな臭いものだから、子供向けにそこに触れる必要がないのが美談で済まされてていいですね。チョコが溶ける温度との戦い、ギブミーチョコレートのイメージを脱し切れていなかったチョコをギフト用の高級品に仕立ててアイデアは素晴らしい。戦前戦後のトアロードのイメージは、西東三鬼の作品で描かれていたものと同じ。神戸はいい街だったんだなあ(過去形。2021/01/17