内容説明
1949年の問題作『静かなる決闘』に黒澤明の贖罪意識を読みとった著者はその正体を突きとめるべく、戦中・戦後期の東宝の動き、当時の観客の反応や黒澤周辺の人たちの証言を丹念に調べていく。そこから浮かび上がったのは戦争と東宝を巡る意外な事実の数々、戦後の黒澤が作品に込めたメッセージ、そして歴史のヴェールに包まれた「航空教育資料製作所」の姿だった。黒澤映画に新たな視点から光を当て、戦後映画史の読み替えを迫る探究の書。
目次
脳める三船敏郎
『静かなる決闘』の謎
PCL入社まで
戦争に行かなかった黒澤明
召集延期の実態
東宝の複合性
日本映画各社の状況
戦意高揚映画は見られていたのか
軍需企業としての東宝―航空教育資料製作所秘話
航空教育資料製作所の意義〔ほか〕
著者等紹介
指田文夫[サシダフミオ]
大衆文化評論家。1948年3月東京大田区池上生。1972年早稲田大学教育学部英文科卒。同年から2012年3月まで、横浜市役所勤務。1983年から『ミュージック・マガジン』に演劇評等を執筆。1991年ウォーマッド横浜を企画。2008年国連アフリカ開発会議記念イベント・高校生ミュージカル『やし酒飲み』を企画(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keroppi
31
黒澤明の作品を徴兵忌避の贖罪という観点から分析している。少しこじつけ感がない訳でもない。「戦争と円谷特撮と徴兵忌避」と副題に惹かれ読んだのだが、円谷特撮の記述は、ほんの少しで、黒澤との関係が語られている訳ではない。肩透かしを食らった感じ。2017/05/01
tsukamg
1
戦争に行くことなく終戦を迎えたことは黒澤明にとって大きな負い目であったという仮定に基づいた作品論。それによって、評価があまり高くない「我が青春に悔いなし」「静かなる決闘」「醜聞」などの、新しい解釈が提示されているのは面白い。ただ、負い目を感じたというのは、いくら証拠を並べても推測でしかないので、仮説であるということを念頭に置いて読むべきだろう。2016/09/23