内容説明
19世紀イギリス。若く美しいルースは、未婚の母=堕落した女と烙印を押され苦悩しながらも、深い信仰と愛に満ちた生き方を貫く。孤独な境遇のルースは、上流階級の青年ベリンガムの恋人となるが、見知らぬ土地に置き去りにされ、絶望する。妊っていた彼女に救いの手を差しのべたベンスン牧師は、家族として迎え入れることを決意するのだった…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
105
ギャスケル3冊目。父母の病死によりお針子として生活を始めた主人公ルースの過酷な人生を描いた悲劇。人生の道が無責任な男によって潰される様が読んでいて辛い。「未婚の母」が軽蔑され無視されるその度合いが厳しすぎる社会である。相手の男は最後まで軽薄な無責任野郎であるのが腹立たしい限りであり、空しい結末だったのが悲しかった。本作もギャスケルの良く練られたプロットが後半になって読む手を加速させた。「メアリー・バートン」と並んで実践女子大OBの方々の翻訳だったが、大変読みやすく感心した。 G626/1000。2024/10/07
Э0!P!
2
これは神話である。女性の性スキャンダルに対しての世間の厳しい目に疑問を呈するためには、ルースという完全で善良な登場人物を作らざるを得なかったのであり、そうでもしなければならなかっという事実は実に恐ろしいことでもある。罪のない子供を罪の子と断じ、穢れた被保護的人物としてしまっていた当時のキリスト教社会において、その枠内においてより望ましい社会を提案した本書の価値は現代でも色褪せることはない。マリアが神に懐胎させられた女性だとすれば、ルースはさながら悪魔に懐胎させられた女性だろう。(そこはテスともかぶる。) 2024/01/18
八朔
2
英国でも、当時のお針子は、悪条件の中で働いていたとは知らなかった。『女工哀史』を連想した。そして、看護婦も過酷。2016/02/02