内容説明
よみがえる身体、うまれゆく親密性。医療モデルを超えて生活支援共同体の実践へ―四つの嗜癖行動パターンと三つの回復過程モデルを手がかりに、暴力・貧困・スティグマに絡めとられた“彼女たち”の生活を取り戻すための援助論。
目次
序章 生き延びるためのアディクション
第1章 誰も「彼女たち」を救えなかった―脱医療的実践としての支援論
第2章 複雑な「彼女たち」の複雑な回復論―四つのタイプと三つのプロセス
第3章 不自由を生きる「彼女たち」―身体と生活の奪還
第4章 救われてこなかった「彼女たち」の援助論―ソーシャルワークと生活支援共同体
第5章 社会的孤立を超えて―「彼女たち」と共に生き延びるためのソーシャルワーク
著者等紹介
大嶋栄子[オオシマエイコ]
1958年生まれ。NPO法人リカバリー代表。日本医療大学講師、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所客員研究員。北星学園大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程満期単位取得退学。博士(社会福祉学)。精神科ソーシャルワーカーを経て、2002年にさまざまな被害体験を背景にもつ女性の支援を行なう「それいゆ」を立ち上げる。2004年、NPO法人リカバリーとして認証され、現在4カ所の施設を運営。フェミニスト・ソーシャルワークについて実践と研究を行なっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
73
なぜ彼女たちはそれほどまでに酒を飲むのだろうか?という問いから始まる女性の嗜癖問題。そこにあったのは、「自らの記憶を消し、過酷な現実からの一時的逃避という“目的”をもって、意図的にアルコール使用を選んでいた」という女性嗜癖者の実体。著者は、女性の嗜癖をジェンダーの視点から構造的問題として捉え直し、生活支援と相談支援から包括的に支援するフェミニストソーシャルワークを提示する。女性の嗜癖問題を性役割葛藤型、他者承認希求型、ライフモデル選択困難型、セクシュアリティ混乱型の4類型に分けて論じているのがユニーク。→2023/11/20
ネギっ子gen
52
本書の目的は2点。①女性の嗜癖問題を、ジェンダーという視点から構造的な問題として捉え直す。②女性の嗜癖問題を包括的に支援するためのソーシャルワークモデルとはどのようなものか、それを提示する。<回復とは単に「アルコールや薬物、ギャンブルや過食嘔吐などが止まる=症状がなくなる」ことではない。むしろ生き延びるためのアディクションが止まった後に、彼女たちは自分が抱え込まされてきた本質的な課題と向き合うことになる。したがって、包括的なソーシャルワークモデルとは、回復を促進するシステムの創造でもある>。ここが重要。⇒2022/12/25
ゆう。
27
依存症支援、とくに生活を支える社会福祉的視点からの支援のあり方を考えることができる。特にジェンダーの視点で、これまで遅れていた女性への支援に焦点をあてたのは勉強になった。2020/03/16