内容説明
われわれの日常生活は実にさまざまな形を取って現れる。つまりわれわれは旅をしたり、眠ったり、本を読んだり、他人と交際を持つか、あるいは彼らと縁を切って孤独や沈黙や秘密を求めたりしながら生きている。こうした行為の一つ一つは、またあるいはそうした生き方の一つ一つは、われわれが自覚している表向きの目的とは違う別の意味を持つのである。グルニエの思索の跡をたどる珠玉のエセー集。
目次
1 旅
2 散歩
3 ワイン
4 煙草
5 秘密
6 沈黙
7 読書
8 眠り
9 孤独
10 香り
著者等紹介
大久保敏彦[オオクボトシヒコ]
1937年横浜市に生まれる。1968年早稲田大学大学院文学研究科博士課程仏文専攻修了。現在日本大学芸術学部教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぞしま
15
静かな瞑想性が横溢する文章。対象への厳密なまなざしに神経質な分類癖を感じる。誰に語りかける訳ではなく、仕方なく刷られてしまったようも感もあるが、自身の内奥へと深く沈む筆致には舌を巻いてしまう。研ぎ澄まされた文章とはグルニエの書体に宿っているのではないかと思ったりする。 思索のかたまり、追いつけない言葉、それらと対峙することが私にとってのひとつの読書の意義であったんだな、とまた実感させてもらった。『孤島』の次はこれ読んで、『地中海の瞑想』という流れがよいかしらん。2019/03/31
misui
0
散歩、ワインなど、日常の諸々を題材にした哲学的エッセイ。たとえば煙草については「私が煙草を吸うにつれて、世界は私の内部で溶けていく。(…)それを<所有>しているような気がしてくる。(…)なぜなら世界を煙に変えるのは私なのだから」といったことが書いてある。2010/12/16