内容説明
「目的論」をキーワードにアリストテレスの思索を解きほぐし、“自然”“魂”“幸福”という3つの「目的論の諸相」に迫る。
目次
第1部 自然(「自然の目的論」と機械論的自然観;自然と技術のアナロジー;目的論と自然美)
第2部 魂(『デ・アニマ』における魂の定義;アリストテレスは機能主義者か?)
第3部 幸福(善のイデア説批判―善の帰一的多義性;三つの愛―愛の帰一性;快の種的差異―J.S.ミルと比較しながら)
著者等紹介
茶谷直人[チャタニナオト]
1972年兵庫県生まれ。北海道大学文学部卒業。神戸大学大学院文化学研究科修了。博士(学術)。現在、神戸大学大学院人文学研究科准教授。専門は古代ギリシア哲学・生命倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Gokkey
7
オリジナルテキストはもとより、近年の研究者の考え方もレビューしながらアリストテレスの目的論を解体していく。生物も無生物も世の中の因果連鎖を司る役割を賦与されているというハイデガーの道具論の原型が見える。質料から生成する生物とその生成因である形相、今で言うオートマトン的な見方をしながらも、さらに魂と言う最上位の階層を設け、この視点から眺めるメタ認知まで射程に入れる。現代の心の哲学は生成因に遺伝子という言葉を与え心の自然化(と歴史化)を試みているが、フレーム自体はアリストテレスと大きく変わらない。2020/03/02
Iwata Kentaro
3
アリストテレスの著作は何度か読んだが論じた本を読んだことないなーと、茶谷先生の新著が目に入ったので慌てて購入。理路はややこしくても意地悪くなくウェルカムな本。著者のお人柄が出ているなーと思いました。個人的にはアリストテレスの目的論は概ね「ナンセンス」だと思ってる。門外漢が何を言うかと怒られるかもだけどそもそも彼は自然科学を論じ、「哲学」者ではなく字義通りフィロソファーでガチで同業者なのだ。彼が現代に来れたら主著を大改編するに決まってる。しかし著者自身が言うように「論証的に妥当か」はここでは関係ない。2019/10/11