内容説明
丸山思想は現実社会へ私を案内し、そこを探究する目を培ってくれる。それに対してハイデガーのそれも含めて哲学的探究は、単に理論的分析のみでは済まず常に私たちの現在とこれからの生き方への問いを潜在させている。この接合により、模索を通り抜けて、「大地に住む」という標語のもとに一つの方向を提示する。
目次
第1部 ハイデガー(人間の基本的存在構造;ハイデガーの近代批判;近代的世界像(付・ゲシュテル)
早期ギリシャの思想
転換
私の構想と丸山の政治思想の考察に向けて)
第2部 丸山眞男(近代・近代化;ファシズム、あるいは超国家主義;軍国・軍・軍人と戦争;抑圧委譲の原理とそもそも政治というもの;日本の前近代と近代化、とくに荻生徂徠;日本の前近代と近代化、とくに福沢諭吉;「“である”ことと“する”こと」と「忠誠と反逆」;マルクス・マルクス主義をめぐって;日本の古層;ナショナリズム)
第3部 展望―「住むこと」へ向けて―(ヘルダーリンと「詩人的に人間はこの大地に住む」;修復;ペシミズム;再び共同存在と政治;幸福論;「芸術作品の根源」の政治的読解;分散化と縮小)
著者等紹介
岡田紀子[オカダノリコ]
1939年生まれ。東京都立大学(現首都大学東京)大学院人文科学研究科修士課程修了。1964‐2002年東京都立大学人文学部哲学科勤務。東京都立大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえ
3
「『忠誠と反逆』を取り上げたとき、封建制の時代にはあった伝統的な様々な中間勢力が崩壊したことが、明治政府が天皇制へ一体化を行うことを容易にしたと論じた…丸山は封建制やそれらの諸勢力の存続を主張したのではない。丸山は一つの国民国家の形成を当時における当然の歴史的進路とみなしている。縮小の方は、私のような仕方で丸山は論じてはいない。現在のようなグローバルな環境破壊へまだ十分目が届いていない…その点については、それとしての展開はなくても、ハイデガーは科学・技術の究明によってそれを早くから視野に収めている。」2023/04/01