- ホーム
- > 和書
- > 文芸
- > 海外文学
- > その他ヨーロッパ文学
内容説明
トルコの役人アガスが支配するリコブリシ村は、ちょうど復活祭の火曜日でにぎわっている。長老会は、七年ごとにキリスト受難劇を上演する村の慣わしにより、その配役を選んで発表した。キリスト役には羊飼いマノリオス、使徒ヨハネ役には村長の息子ミヘリス、ペテロ役には行商人ヤナコス、ヤコブ役には居酒屋の主人コスタンディス、マグダラのマリア役には寡婦カテリーナ、そしてキリストを売ったユダ役には馬具屋のパナヨタロスが選ばれた。その日の夕方、トルコ軍に村を焼き払われて逃れてきた、フォティス司祭率いるギリシャ人難民の一団が村に庇護を求めて現われたことから、村に亀裂が生じる…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tieckP(ティークP)
5
20世紀ギリシャの作家カザンザキスの小説。題名も示すように、キリストの受難劇を上演するトルコ支配下のギリシアの村(ローマ支配下のユダヤ人と重なる)が舞台となり、イエスや使徒に合った人物を選んだ村人が役に入りこみ、キリスト教の正義の視点から、普通の村人や欲深い司祭らと対立関係に陥っていく。道徳ものではあるが、作家の技量は高く、視野は広く、驕りは少ないため、会話の間の自然描写は美しく、文は読み易く、人の弱点も滑稽で笑えるものに仕上がっている。このテーマをこう処理できるならその作家は文豪と呼べるだろうという本。2020/08/14
ちゃせん
0
先が気になってどんどん読んでしまう。キャラクターそれぞれが強い個性を持っているし、物語も人をひきつけるパワーがあると思う。キリスト教色が非常に濃いので、そのあたりの背景知識があるとより味わい深く読めるかもしれない。2012/05/01
姫苺
0
物語としては先が読めなくて面白いし、人物もいきいきしている。でも、ギリシャとトルコの関係や、キリスト教(ギリシャ正教)の知識がないと理解しづらい部分も多い。ところで、ヨーロッパではユダは黒髪黒髭で描かれることが多いけど、ギリシャでは赤髭が一般的イメージなんだなぁ…2012/02/06
Quijimna
0
オスマントルコ支配下のギリシアの小村の喜怒哀楽。その中で繰り広げられるキリスト教の寓話的な奇跡と希望。ニコス・カザンザキスの底なしの人間愛が、100年の時を超えて脳裏に浮かぶ。新訳のおかげで彼の世界観が身近になった。★★★★☆2011/06/22
futhork
0
トルコ〜ギリシャの農村を舞台にした本。一神教の世界って本当に野蛮だと思う。というか、一神教は、人間のうちに潜む野蛮な、野性的な感情を、神との己との対峙という形に置換していくのだな、という自分の実感を、物語の形で見せつけられた本だった。上巻は本当に救いがなく、読んでいてけっこう自分には重たかった。2023/01/14