内容説明
戊辰戦争で“賊軍”となった東軍各藩は、戦後、明治新政府よりきびしくその戦争責任を追及されながら、自藩の存立を求めて呻吟した。村上藩家老・鳥居三十郎と、会津藩士・伴百悦の死…。今、それぞれの苦悩と悲憤を通して、勝者の論理を鋭く衝く。
目次
お城山落花―村上藩家老・鳥居三十郎(北の平和郷;藩主の急死;戦火の中で;藩を背負って)
束松の復讐―会津藩士・伴百悦(山野の遺体;待ち伏せ;越後の夕陽)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
6
幕末の争乱のさ中に生き、職務を全うした村上藩の若き重臣、鳥居三十郎と、会津の義士、伴百悦の物語。小藩故に佐幕派に止むを得ずつき、藩の存続のために戦い、賊の汚名を一身に引き受け、刑死した鳥居三十郎。逆賊の汚名のため埋葬を許されず、路傍に放置された会津藩士たちの躯を埋葬するため、士分から被差別民に身を落し、腐乱した同胞を丁重に葬った伴百悦。日本の国際世界への登場という、時代に強制分娩させられた陣痛にしては、耐え難い激痛も、今では「維新」という軽々しい言葉に成り下がっている。人がなす悲劇も忘れた頃にやってくる。2013/10/21