内容説明
歴史的神秘性を宿している天皇の存在は、柳田国男が腑分けした〈祖霊信仰―産土信仰―氏神信仰―天皇信仰〉という経過を辿って天皇制心理を形成している。本書では天皇信仰の幻想と制度的実体との葛藤に論及しつつ、天皇制国家の作為と自然の思想的構図を追究した。
目次
1 近代国家の形成と天皇制(天皇神学の創出;国体論の形成;伊藤博文論;平田東助論;千石興太郎論;明治民法と家イデオロギーの形成)
2 民衆思想と天皇制(在村的暴力の形成;南方熊楠と神社合併反対運動;「愛国心」形成の歴史像;天皇制支配と禁忌;「常民」に宿る天皇信仰;象徴天皇制と地方自治の構造)
3 ナショナリズムと国家(北一輝と未完の革命;昭和維新思想の根拠;大正期民衆のナショナリズム;昭和民衆精神史ノート;近代日本と情念;現代保守主義の思想的位相)
4 家と民衆(家と土への回帰;「家」の思想)