内容説明
朗々とした五代目海老蔵の声が耳に蘇る。役者の無理難題に応え、お客の誹謗中傷に耐え、座元の海千山千に弄ばれ、お上の無理無体に憤りながらも、六分の矜持と四分の熱を焔に、立作者・河竹新七は黙々と新作を世に送り出す。願うはただ一つ、「通じよ!」幕末明治の激動期、歌舞伎界を支え続けた“我国のシェークスピア”(坪内逍遙曰く)河竹黙阿弥の天晴な作者人生を描く!
著者等紹介
奥山景布子[オクヤマキョウコ]
1966年愛知県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。高校教諭、大学専任講師などを経て創作を始める。2007年「平家蟹異聞」で第87回オール讀物新人賞を受賞。09年、受賞作を含む『源平六花撰』で単行本デビュー。18年『葵の残葉』で第37回新田次郎文学賞と第8回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。児童向け歴史小説なども手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすか
24
アクの強い芝居者たちや治世者達からの圧を受けつつも、狂言作者としての矜恃を守り一時代を築いた河竹黙阿弥。膨大な情報量に尻込みしたが、芝居にかける熱量に引き込まれ楽しめた。2023/04/20
びぃごろ
16
1840~91年(明治24)狂言作者の河竹黙阿弥(新七)を描く。質屋の長男ながら家業を畳み、河原崎座の作者部屋に入る。師匠の遺言は「座元や役者とはちょっと隔てを付けろ。少しでも作者の意地の張りどころを残しとけ」座元は儲かる焼き直しの話、役者は自分の出番の話、うまく折り合わせ客が喜ぶ本を書く。いつかは新作をと地道に頑張る新七である。海老蔵、小團次、左團次、田之助、團菊、黙阿弥の章ごとに役者絵(最後は写真!)と黙阿弥の娘糸の語りで幕開けというのも洒落てる。明治初期は史実通りに演れと命令があったとは!ヤレヤレ。2023/02/23
べあべあ
9
黙阿弥作品大々好きなので、その裏側が覗ける様な心地で面白く読めました。坪内逍遥、よっ、お目が高いね!黙阿弥が日本の沙翁とは、正に言いえて妙、シェイクスピアも黙阿弥も詩の様な格調高く美々しい文句がたまらんのです。縁者による説だと隠居名の黙阿弥は、”元の木阿弥”にちなんで、引退したいけど何かあったら結局作者家業に戻んだろな、的な意味が入ってるらしいのですが、作品中の晩年は、もう嫌だと思う度に結局業界に戻る、正にそんな感じ。でも業でしょう、性なんでしょう、書かずにいられなかったんだろうな。2023/05/22
mitubatigril
7
こんなに歌舞伎役者ではなく元となる狂言作者の河内黙阿弥の生涯を書いてあり、黙阿弥が主人公だから作者になった経緯や人生を描いてあるけれど出て来る名前の歴々が凄いのと黙阿弥の意地が痛快で 歌舞伎役者に落語家に登場するし、今迄はぼんやり歌舞伎の演目と落語の演目が同じ演目があったりするのが知ってたけど、なるほどこんな感じだったんだと凄く納得したり。 一気に読了でした。2023/06/21
fukufuku
5
個人的に四代目南北の次に好きな河竹黙阿弥。幕末から明治の人。本作は勝諺蔵時代から始まる一代記。主に黙阿弥と縁の深い役者で章立てされている。幕末の江戸歌舞伎で外せないのは、五代目海老蔵と八代目團十郎親子と田之助。團十郎の死の解釈は上方でのことなので描描写されないが、田之助の壮絶な様は充分に描かれている。小團次とともにぐいぐい昇り調子の辺りは爽快に読み、明治期の得体の知れぬ何かと闘う辺りは切なくやるせなくもどかしくやきもきしながら読む。作者としての矜持と芝居への愛が伝わる。歌舞伎をご覧になる人向け。2025/06/24