内容説明
海底に散り逝きし戦友よ、眠れ―いまもなお体内に数十個の弾鉄片をとどめる一水兵が、修羅の海で刻みこまれた苛酷な体験を語りつつ、死者に捧げる鎮魂の絶唱。起死回生の反攻をこころみながら、ついに鋼鉄の棺と化した連合艦隊艦艇群がたどった悲惨な航跡を、「大和」艦上の下士官たちの姿を軸にえがいた海戦記。
目次
不運なる星の下に
栗田艦隊、出撃す
激闘の陰にあるもの
何のための厳しき訓練か
軍艦旗はためきて
「大和」シブヤン海を行く
執拗なる敵襲に抗して
炎の海の死闘の末に
生と死をみつめて
地獄の島に死せず
終章 惨たる敗北のなかから
著者等紹介
小板橋孝策[コイタバシコウサク]
大正8年、群馬県生まれ。昭和13年7月、国鉄(現JR)勤務。15年1月、徴兵により横須賀海兵団入団。同年5月、重巡「摩耶」乗組。16年6月、操舵特技兵を修了、操舵員となる。駆逐艦「朝雲」、第17掃海隊をへて、18年9月、海軍航海学校高等科卒。重巡「愛宕」、戦艦「大和」、明石丸、第11根拠地隊司令部付。その間、ハワイ、ミッドウェー海戦、マリアナ沖海戦、レイテ沖海戦、明号作戦(仏印)に転戦する。レイテ沖海戦にて戦艦「大和」艦橋で重傷を負う。20年5月、海軍上等兵曹。終戦後、サイゴン(現ホーチミン)港で小型船艇の艇長。21年5月、復員。平成29年1月、歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イロハニ
17
降伏10ヶ月前の捷一号作戦、栗田艦隊の操舵下士官として旗艦「愛宕」にて従軍。十月22~25日のブルネイ出撃~自身の被弾負傷までが一人称語りで記される。一人称ながら登場人物多数で、これは後年の戦友会等での取材(四十名程)を軸にした為と思う。全編、勇壮な叙事詩ながら基底にあるのは中堅下級従事者(兵士)達への哀惜だ。が只それを暗黒一色に塗り込めただけではない。その絵に描いた如き艦隊生活の剛毅さ、平時の兵達のヤンチャ、そして随所の大舞台の書き割り的な南海風景の点描が本作に厚みを付与していた。得難き記憶とし拝読した2023/08/30