内容説明
はるか過去へと去った太平洋戦争の渦中で、日本の航空部隊関係者はいかに考え、どのように戦いに加わっていたのか―空の戦いのありさま、人間の心の在り方、飛行機の特徴と優劣…陸軍の空中勤務者、海軍の搭乗員を中心に、日本陸海軍の航空部隊を構成する人々の真摯な姿を捉えた珠玉のノンフィクション短編集。
目次
火中に立つ将校操縦者―本土邀撃戦と「秋水」への訓練
三式戦留守隊、中京の空に―残された者たちの奮戦記
「隼」各型はいかに戦ったか―使いやすさも名機の条件
十三期の空中戦―予備士官、零戦で敢闘す
これが「月光」の操縦員―二心なく海軍に務めた三年余
偵察機で飛び抜けた!―二式艦偵から「彩雲」に乗り継いだ敏腕
将校偵察員が体感した二年間―「彗星」の後席で戦況を注視して
玉砕島テニアンの飛行士―要務のパイオニアが迎えた陥落後の情景
飛行機乗りに関わる思い出―接点からの抜粋あれこれ
著者等紹介
渡辺洋二[ワタナベヨウジ]
昭和25年(1950年)、名古屋に生まれる。立教大学文学部卒業後、航空雑誌の編集勤務。53年、第2次大戦の軍航空に関する執筆に専念。平成22年(2010年)、職業としての軍航空の著述を終了。以後、余暇を航空史研究にあてる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yamatoshiuruhashi
49
著者自らが面談取材した陸海軍の飛行機乗り達の記録。恐らく全ての人々が鬼籍に入られたことだろうと思う。写真やプラモデルでしか知らない機体に実際に乗り込んだ人たち、その操縦性などから戦闘の生々しい話まで幅広く、これこそ体験者でなくては語れない。近年の「語り継ぐ」がバイアスのかかった話を当時を知らずに語ることと大きく異なり、まさに良くも悪くも本当の体験談を集めた本書は、例え語り手が語りたくないと思ったことでさえも、貴重な資料となっている。最終章の著者の拾遺集も秀逸。戦死者が毎年会いに来てくれる話に心動かされる。2021/12/03
roatsu
15
本書初版刊行時には著者が取材して肉声を聞かせてくれた元将兵の方々が全員物故したというあとがきの一文は重い。当事者が旅立ってゆくのは避けられないからこそ、渡辺さんが取材し甦らせた日本陸海軍航空戦史の実相は、生きた先人達が命懸けで体験した歴史を可能な限り正しく後進に伝える千金の価値を持つ。陸鷲海鷲の戦闘機、偵察機を中心にその戦いを伝える短編が収録されるが機材の話は無論のこと、操縦席を始め各自の持ち場で大戦を戦い抜いた元将兵の姿に光を当てる細やかさが凄い。歴史は生きた人間が織りなすものなので当然のアプローチでは2021/11/03
犬養三千代
7
ウクライナの戦場に思いを馳せた。 第二次大戦始まりの頃は整備も行き届いた戦闘機、戦況が悪化つまり負けかけるとどこまで飛べるか解らないような戦闘機に乗らねばならない。精神論では無理。助かった人の話も悲惨。 それでも、明るく生きた戦闘機乗りたちに感謝。 2022/04/08
大森黃馨
0
特に興味を引かれたのは、『火中に立つ将校操縦者』(対談)中の記述「ロッテ編隊空戦一本槍への疑問・単機格闘戦の集中訓練」「格闘戦をやらんと落とされるぞ」架空戦記もノンフィクション戦記も共に、一般公式論に基づいて作り上げた正史に疑いを持っておらず、どうにも平板、な気がしてしまう。各々の作家の方々も、こうした異論外論に基づいた話を、それこそ歴史を覆し全体論ではなく一部論の異伝でもよいから、嗅いて欲しいな、と思った。2021/11/06