内容説明
日本海軍ではダメージ・コントロールを「応急」と呼び、「戦闘によりあるいは不慮の災害に際会して船体に被害を生じた場合、即応して当面の修復を行ない、艦艇の戦闘力を持続し、その発揮を期する業務を謂い、防火、防水、破壊処理などを為す行為」と説明していた。その、制度、組織、人事、教育などを詳解する。
目次
第1章 明治、大正期の艦内応急防御戦(海軍「応急」のルーツは;草創期海軍の運用教育 ほか)
第2章 昭和戦前期の艦内応急防御戦(軍備制限研究委員会の研究;「水中防御」に後れをとる? ほか)
第3章 太平洋戦争前期の艦内応急防御戦(開戦当初の米英艦艦内防御;「翔鶴」応急戦をかく戦う ほか)
第4章 太平洋戦争後期の艦内応急防御戦(艦内不燃化に徹底を期す;「大和」「武蔵」―初被雷 ほか)
著者等紹介
雨倉孝之[アメクラコウジ]
昭和3年11月3日、東京に生まれる。20年4月、高等商船学校東京分校(機関科)に入校、あわせて海軍機関術予備練習生を命ぜられる。終戦により同年8月、退校、同時に予備練習生も被免。戦後、日本国有鉄道に勤務。59年、退職。東京理科大学理学部卒業の技術屋出身だが、海軍史・海事史の調査にたずさわり、とくに海軍制度史の研究に打ちこむ。平成27年、歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さきん
22
戦闘となれば、戦艦の損傷に対する応急措置に戦闘中も追われることになる。電気系統、消防体制、浸水対策など、帆船時代から太平洋戦争末期まで、戦艦を中心に追う。組織論として期待したが、あくまで具体的な事例集にとどまっている。2019/11/04
小太郎
14
先日NHKの特集で「幻の巨大空母信濃」をみて、あの大和型の3番艦なのになんで魚雷4本くらいですぐに沈んだのか少しは理解できました。そう言えばこんな本が積んであったので早速読みました。日本海軍のダメージコントロールについて色々なエピソードと軽妙な語り口で読ませる一冊でした。ただアメリカやイギリスなどとの比較が少なかったのが残念。太平洋戦争時のアメリカのダメコンは素晴らしいと聞いていたのでそこが知りたかったです。2019/08/17
む
3
敵弾の命中によって生じた被害の拡大をいかに食い止めるかというダメージコントロールについての本。市販のものではほかに類書がなく、知らないことだらけだった。 前半が制度や歴史に関するもの、後半が実際の戦闘でのダメコンの失敗成功例となっている。太平洋戦争後期にかけて「不沈化」「不燃化」の努力が行われていたこと、一定の成果を上げていたことがよくわかる。人事などに関してはややこしいので飛ばしながら読んだ。 あくまで「日本海軍の」ダメコンに関する本だったので、米海軍との比較があるとさらに面白いと思う。2019/02/24
剛田剛
1
「海戦」を我々は「戦艦◯◯」と「戦艦△△」の戦い、あるいは「××提督」と「□□提督」の戦い、という単位で読んでいる。また、海戦を記述する大文字は水雷であり火砲であり航空機であるが、それに携わる兵員は必ずしも多数派ではない。実際のところ、海戦という場にいた人間の大半にとって海戦は「なんとかこのフネを浮かせておくために担ぐ角材や排水のために必死に回すハンドル」の感触として体験されているはずである。2020/01/23
おい
1
かなりマニアックな分野。気になる艦のところだけ読む手もあるかも。 ★★★2019/04/20