内容説明
潔く散り得た者は名優にも似て見事だが、散り切れなかった者はどうなるのか。生き延びて、筆を執る道を切り拓いた直木賞作家の原点ともいえる、それぞれの戦士が辿った茨の道。
目次
捕虜敗戦
捕虜独房
地獄谷収容所
虜囚
壮烈俘虜記
アンボン島に飢える
著者等紹介
豊田穣[トヨダジョウ]
大正9年、満州に生まれる。昭和15年8月、海軍兵学校卒業。16年5月、霞ヶ浦航空隊付。第36期飛行学生(操縦)。18年4月、ソロモン方面イ号作戦で撃墜され、一週間海上漂流の後、米軍の捕虜となる。21年1月、帰国。中日新聞入社。48年、「長良川」で第64回直木賞受賞。平成4年度中日文化賞受賞。平成6年1月歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シャル
11
敗戦より先に敗北を迎え、捕虜となった者たちの捕虜戦記集である。前半は主に著者自身の体験記であり、存在してはいけなかったはずの日本軍の捕虜がどういった心境で敵地の中で生きていたのか、またどのような組織として構成されていたのかが描かれる。人間の集まりであるから様々な問題も生じる様は、軍隊にあって軍隊ではなくなった集団だけに実に複雑な姿を見せる。後半の捕虜となって生き残ったがために自決した古賀少佐と、戦後戦争犯罪人として処刑となった河崎、白木両名の話も戦時中の日本軍の捕虜の意識として印象に残るものである。2017/01/30