内容説明
エンジンの音轟々と隼は征く雲の果て…。ジャワで、ビルマで敵空軍を震撼させた陸軍飛行第六四戦隊戦隊長・加藤建夫。チームプレイに徹して、常に自分よりも部下を、自隊より僚隊を思いやり、率先先頭に立って困難な任務に立ち向かった名指揮官の戦場の日々を、最愛の部下が克明に書き遺した感動の決定版空戦記。
目次
第1章 積乱雲のかなたに(大空のエース;歓迎の宴 ほか)
第2章 コタバルの海鳴り遠く(三つの要望;出撃前の儀式 ほか)
第3章 隼は征く雲の果て(十七歳の少年兵たち;戦果のかげに ほか)
第4章 桜花の散るごとく(空の神兵の祈り;出撃につぐ出撃 ほか)
第5章 ベンガル湾の波間に消ゆ(愛機はわが生命;闘魂烈火と燃えて ほか)
著者等紹介
檜與平[ヒノキヨヘイ]
大正8年、徳島県に生まれる。昭和15年6月、陸軍航空士官学校卒業。飛行第64戦隊付。昭和16年、東江作戦参加。同年12月、山下兵団船団掩護、マレー航空撃滅戦参加。昭和17年1月、シンガポール航空撃滅戦参加。同年2月、パレンバン航空撃滅戦および落下傘部隊掩護、今村兵団船団掩護、ジャワ航空撃滅戦参加。同年3月、ビルマ航空撃滅戦参加。昭和18年11月、インド洋上の空中戦で右下腿を切断される。昭和19年10月、明野陸軍飛行学校教官。昭和20年6月、任陸軍少佐。飛行第111戦隊大隊長として本土防空にあたり、終戦をむかえる。平成3年1月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スー
20
14義足のエース檜與平から見た加藤建夫戦隊長、檜と部下達がどれだけ加藤戦隊長を慕っていたかが良く分かりました。加藤=隼のイメージだったのに最初は隼の使用に反対していたとは驚きでした。零戦の活躍の影に隠れがちの陸軍ですが加藤率いる64戦隊は問題の多かった隼を駈り常に劣勢な状況で奮闘して敵を圧倒していた、その原動力は隼の機動力はもちろんですが部下想いの加藤隊長の人柄が成せた大業だった。パイロットと整備員が一致団結していた事が戦隊の高い稼働率を維持し人機一体となり限界まで力を発揮させていた。加藤の帰還が少しでも2020/01/19
roatsu
10
軍人そして一人の人間として個人的に最も尊敬する加藤建夫少将の伝記。加藤戦隊長率いる陸軍飛行第64戦隊にて部下として薫陶を受けつつ指揮下で戦った檜與平大尉の手になる誠実で詳細な内容。行間からは戦後の星霜を経ても揺るがぬ敬慕の念がにじむ。過酷な戦闘機乗りを40歳で現役で務め、一部隊を預かる指揮官として赫々たる戦果を上げた事実は技量とリーダーシップの卓越、それを支えた個人的な克己、探究、節制など不断の努力とそれを当然とした故人の凄さを伝える。陸軍航空隊の不世出の武人の生涯と同時代の戦史を知る上で好適な一冊。2016/05/24
江川翔太郎
1
この本は飛行第64戦隊の加藤隊長の生涯を追った作品です。 加藤隊長といったら隼のイメージがとても強いのですが、この加藤隊長本人が隼制式採用反対の急先鋒だったことには驚きました。しかし採用が決まると隼をいかにうまく使えるかを研究し実際にやってみせるというように行動で示す隊長の姿勢に感銘を受けました。 私はこの本を読むまで陸軍の戦闘機が南方でここまで激しい戦いをしていることを知りませんでした。この本は加藤隊長が戦死するところで終わっているので、それより先の陸軍戦闘機部隊の戦いも知りたいと思いました。2018/10/06