内容説明
太平洋戦争の転機となったミッドウェー海戦で三空母被弾炎上後、ただ一隻残った空母「飛龍」を率い敢然と米艦隊に反撃した闘将。楠木正成の幼名「多聞丸」を受け継ぎ、名将として海軍の輿望を集めながら従容として乗艦とともに沈んだ提督の知られざる素顔を資料、証言、家族に遺した手紙等から生き生きと描く。
目次
プロローグ―死闘ミッドウェー/雲海からの急降下爆撃
戦争の世代
駐米海軍武官
艦長時代
対米外交に暗雲
重慶爆撃
空母飛龍
山本五十六の国際感覚
孝子への手紙
鹿児島湾
択捉の海
トラ、トラ、トラ
航程五万カイリ
ミッドウェー海戦
鎮魂の海
我れ敵を撃滅せんとす
「山口多聞」関係年表
著者等紹介
星亮一[ホシリョウイチ]
1935年、仙台市生まれ。一関第一高校、東北大学文学部卒。福島民報社記者、福島中央テレビ報道制作局長を経て、現在、歴史作家。幕末の会津藩に関する作品をはじめ、戊辰戦争、近現代史や紀行本など幅広い著書を出版。著書『奥羽越列藩同盟』で第19回福島民報出版文化賞、会津藩の研究でNHK東北ふるさと賞を受賞、『国境の島・対馬のいま』で平成27年日本国際情報学会功労賞受賞。この間、日本大学大学院で国際関係を学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ロビン
15
太平洋戦争時、米国との戦争に反対し続けたが、山本五十六と共に意に反して従軍。真珠湾攻撃を成功させ、ミッドウェー海戦において味方の空母三隻を失う窮地の中果断をもってアメリカ空母を撃沈せしめた海軍提督・山口多聞。対米戦争の愚かさを知悉し外交による解決を期待しつつも、戦略なき軍部の判断により死地に赴き、最期は脱出せず空母「飛龍」に残って死んだ山口。部下思いで、愛妻家、子煩悩であり、卓越した将であった。その無念は真田幸村もかくやと思われる。日本軍の慢心、無戦略には愕然とさせられる。泣くと思わなかったが最後は落涙。2024/09/07