内容説明
長期的な人事計画を持たずに大戦争に乗り出した昭和の陸軍―本土決戦にも作用した複雑怪奇な“陸軍人事”を解明する。
目次
第1部 日本を動かした三長官の人事(人事権と予算権を握る陸軍大臣の選任;統帥権独立を支える参謀総長の選任;無風地帯にいられる教育総監の選任;航空総監の選任)
第2部 重視されるべき指揮官の人事(軍の命運を握る各級部隊長人事;外地にあった四人の軍司令官;内地にあった司令官;火の車だった戦時の指揮官人事)
第3部 常に優先された参謀の人事(天保銭組が歩む厳しい階段;幕僚の上がり、局長と部長;野戦部隊の幕僚)
著者等紹介
藤井非三四[フジイヒサシ]
軍事史研究家。1950年、神奈川県生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。国士舘大学大学院政治学研究科修士課程修了(朝鮮現代史専攻)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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CTC
14
15年光人社NF文庫書き下ろし。著者は『陸軍派閥』の藤井非三四。『〜派閥』が人に着目して、さらに集団の特色を見ていくのに対して、本書は役職着目。三長官から各軍首脳ポストまでを考察するが…『〜派閥』がエピソードで読めるのに対して、こちらは“期”や経歴からより理詰めで決まるケースが多いし、陸軍大臣ポストを考察した次章が参謀総長を考察、といったように編年で繰り返しのため、より忍耐が必要になる。 ポストごとの歴任者表は罫線なしでとっつきにくいが、慣れると“期”や経歴が一目でわかり、揉めるポイントまで見えてくる!2018/06/20
しんこい
11
パナに続いて人事の本。陸軍でも成績や戦績でなく、出世や人事に絡むのはやはり人間関係やめぐり合わせ、まったく適材適所は絵に描いた餅。それに、採用を減らしたり、不祥事である時期大量辞職したことで戦争中に幹部将校が不足するのは、会社も同じ。20年先を考えて人を育成するのは大変です。2016/06/09
高木正雄
2
再読。教育総監や航空総監、特に教育総監の地位が下がって高級将官のとりあえずのポストになったのはなるほどなあと思った。この本の最初から最後の方まで出てくる杉山と畑はすごかったんだね。都会の連隊長にあてられるのも甲乙丙のランクをつけて平準化をはかっているとあるがウィキペディアの連隊長を見るとその通りだった。じっくり読むと時間がかかる2025/05/06
電羊齋
2
著者は、長期的な人事計画の欠如こそが日本の敗因と結論する。大戦争に乗り出し、大量動員で兵員の数だけは増えたが、兵員を統率する将校の絶対数が不足した。陸士の期、陸大の卒業序列、年功序列、人間関係、中央官衙の組織の論理による適材不適所人事も横行。結果として、なけなしの有能な人材が陸軍中央に優先配置され、野戦部隊の質が低下。また、中国、米国など戦争相手国を知る専門家が、肝心な時に専門外のポジションに配置されているというミスマッチも発生。結局のところ、日本陸軍は質も量も確保できなかったということか。2016/11/01
T K
1
こんなマニアックな内容の本が、なぜ文庫本で出てるのか? まったく理解できませんが、ついつい買ってしまいました。この著者の言わんとしてる所は、日中戦争から敗戦までの軍の厳しい戦いは、無計画な人事配置にも一端があるということ。「なるほど」と思うところもある。私の職場も組織としては大きいほうだが、1年後、5年後、10年後を見据えた人事計画を持ってるのかな?2016/06/13