内容説明
明治の日本が、そして秋山兄弟が挑んだ大国ロシアは、なぜ、戦いを望みながら敗れたのか。三百年続いたロマノフ朝に巣食う階級社会の崩壊、ニコライ二世の優柔不断と私腹をこやす閣僚たちの暗躍、列強各国の思惑とシベリア鉄道の脆弱等。ヨーロッパの嫌われ者としてのロシアの内部事情を描いた日露戦争の敗因の証明。
目次
第1章 ロシアはなぜ戦争を始めたのか
第2章 皇帝ニコライ二世とその臣下たち
第3章 ロシアと列強諸国の思惑
第4章 敗軍の将クロパトキンの真実
第5章 アジアの不可思議
第6章 その時、ロシア陣営は
第7章 バルチック艦隊の理由
第8章 そして講和へ
著者等紹介
岡田和裕[オカダカズヒロ]
1937年、中国東北丹東生まれ。作家。新聞記者、雑誌編集者を経て文筆活動に入る。専門は近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤瀬こうたろー
17
題名のとおり、ロシア側から見た日露戦争の内幕を描いており、ロシア版「失敗の本質」といったところです。これを読むと、小国といえど相手の実力を過少に見て安易に戦争に臨むことの恐ろしさがよくわかります。「坂の上の雲」でも描かれたとおり、この頃、日本はまさに悲愴な覚悟で勝つ努力をしていたわけで、しかもロシア革命前夜といった国内に爆弾を抱えた情勢では勝てるものも勝てないですよね。ただ、読んでいくとロマノフ王朝の官僚の思考がどことなく昭和の日本軍上層部の考え方に似ていて、結果的に負の連鎖が続いたという印象です。2019/12/21
うたまる
6
「日本は勝ったつもりでいるが、世界はそうは見ていない」(西園寺公望)……ロシア側から見た日露戦争の敗因レポート。主なものだけでも、皇帝の優柔不断、指揮系統の乱れ、兵站確保の失敗、革命勢力の敗戦主義。なるほど、これじゃまるでロシア側の自爆であって、日本に負けたとは思わないだろうね。そしてここからノモンハン事件、日ソ不可侵条約破棄と続き、両国の相互不信が深まった。しかし俯瞰で見れば、日露戦争とはドイツ皇帝ウィルヘルムを始め英米仏独の思惑で戦わされたもの。不信感は善人面してる者にこそ向けるべきではないの?2016/12/25
feodor
3
ロシア史としてのとらえでの日露戦争。なかなか新鮮。何よりも専制体制のもとで、しかも性格的に弱いニコライ2世のもとでのロシア帝国の状況の中で、いかにしてロシアは負けていったのかが描かれている。戦争に負けたのもあるのだけれども、それよりも国内事情による部分が大きい。ウィッテの評価が実像よりも高いような気もするけれども、どうなのだろうか。クロパトキンとアレクセーエフの二元体制だとか、ドイツのヴィルヘルム2世の暗躍だとか、なかなか新知識でおもしろいところも多く、よい本だった。2012/03/28
チェ・ロ
2
日露戦争と言うよりはロシア訂正の耐久年数が限界に達した話等やロシアの政治家の駆け引きや欧州の情勢に主軸がおいている気がする2011/04/06
Masaki
1
日露戦争に日本が何故勝てたのではなく、ロシアが何故負けたかを書いてます。ロシア国内の革命勢力、絶対王政の矛盾、軍の指揮の不統一、長過ぎる補給線など、負けるべくして負けたとのこ。逆に日本は、奉天会戦、日本海海戦の勝利など、運に助けられたところもありました。負けに不思議の負けなく、勝ちに不思議の勝ちありでさね。2023/02/22