内容説明
大空の女王―復活プロジェクト。かつて、九七式大艇、二式大艇、戦闘機「紫電改」を世に送り出した航空技術陣が、戦後の空白を越えて挑戦した新たな傑作機誕生までの日々。戦闘用から人命救助へ。対潜飛行艇PS‐1、救難飛行艇US‐1、US‐1A改開発への苦しくも希望に満ちた道のり。夢を実現した男たちの足跡を辿る感動のノンフィクション。
目次
最後の二式大艇
隠忍の日々
急がば回れ
動き出した山
巣立つ先行試作機UF‐XS
本命PX‐Sの開発始まる
生みの苦しみ
荒海に降り立つ
世界で唯一の対潜飛行艇
試練に耐えて
新たなる旅立ち、救難飛行艇へ
来るか飛行艇の時代
戦力化の苦悩
命を救う飛行艇
明日への飛翔
著者等紹介
碇義朗[イカリヨシロウ]
1925年、鹿児島生まれ、東京都立航空工業学校卒。陸軍航空技術研究所をへて、戦後、横浜工業専門学校(現横浜国立大学)卒。航空、自動車、鉄道などメカニズムと人間のかかわり合いをテーマにドキュメントを発表。航空ジャーナリスト協会会員。横浜ペンクラブ会員。自動車技術会会員。カナダ・カーマン名誉市民。神奈川県茅ヶ崎市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yamatoshiuruhashi
2
「帰ってきた二式大艇」という表題であるが、本書は川西の名機・二式大艇の日本への帰還運動の話ではなく、その流れをくむ新明和による戦後の新飛行艇、PS-1の開発物語である。二式大艇の話だと思って購入したのだが、PS-1も好きな飛行機で手違いはあったが、結果的に興味深く読んだ。現在もUS-2として救難に活躍している飛行艇は日本の世界に誇る技術であると同時に、開発時には米海軍がこれほど協力してくれているとは知らなかった。米国は「空の帝国」ではあろうが、日本はまた別の空を掴んでいるのだ。技術日本の面目躍如。2013/09/13
黄昏なすたん
2
傑作飛行艇二式大艇を作り上げた川西飛行機が戦後に対潜哨戒飛行艇を作り上げ、やがてそれが救命飛行艇へと進化していく姿を描いた物語です。今や飛行艇が飛ぶ姿すら珍しいものとなりつつありますが、その有用性を訴え身を切る様な思いで開発を続けた人たちには頭が下がります。また、表題の「帰って来た」が表す通り最新の飛行艇は確かに二式大艇の子孫ではありますが、節目節目には新規開発以上の技術的な難題にぶつかり、それを技術者たちが一つずつ超えていく姿にも感動しました。2011/06/15
キミ兄
1
PS1、US1の開発記録が淡々と語られている。ぜひともU-TUBEのUS2の離水シーンを見てほしい。その技術力の高さが素人にも実感できる。☆☆☆。2011/01/01
Masato Watari
1
二式大艇からPS−1、そしてPS−2の誕生前夜までを綴った60年余りの物語。 より良い飛行艇を生み出すため、一つ一つの問題を確実に解決し、その経験と技術が、現在のPS−2に継承されている事を実感。 日本の技術力や海自航空部隊の海外からの評価の高さの根底が見えたと思う。 なお余談だが、最前線に立つ自衛官だけで無く、技術者や経営者たちも、海の恐ろしさを知りながら作って来た事が分かる、数少ない本だと思った。2013/10/23