内容説明
太平洋戦争の開戦時、南雲機動部隊の行動をカムフラージュするためのオトリ部隊となり、ミッドウェー島に猪突猛進。スラバヤ海戦は勇躍奮戦するも、戦果はすべてが上級部隊の手柄となる―高速力を活かして重宝がられ、貧乏くじをひきつづけた日本海軍の駆逐隊の戦いの日々。極北の氷海から南溟の果てまで太平洋狭しと暴れまわった“駆逐艦野郎”の赤裸々な姿を描いたノンフィクション戦記。
目次
駆逐艦の過去帳
古馬穴に乗り組むの記
船底の歓迎パーティー
ネズミ上陸の顛末
海軍病院騒動記
海の宮様行状記
囮艦隊出撃す
駆逐隊司令の捜索願い
「余ハ拒絶ス」
貴艦に神の恵みを
ソロモン群島の仁王様
珊瑚海の死闘
暗き極北の海
駆逐艦の墓場
地獄行き定期急行
著者等紹介
大高勇治[オオタカユウジ]
明治42年1月、秋田県に生まれる。海軍通信学校高等科卒業。駆逐艦「菊」を経て第六駆逐隊司令部付として駆逐艦「雷」に乗り組み、大陸沿岸封鎖作戦に従事。第七駆逐隊司令駆逐艦「潮」に乗り組み、囮艦隊としてミッドウェーに出撃。スラバヤ沖海戦で対潜水艦作戦、チモール攻略戦、ルンガ沖夜戦、ガダルカナル島輸送作戦で活躍する。司令部付掌通信士。昭和56年1月歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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白義
12
著者は大戦時は潮の乗員。海戦記としては凄まじくいい加減ながら、その細かいことを気にしない豪快な性格がエピソードの端々に現れていて滅法面白い。インテリでスマートな海軍というイメージをベリベリ引き剥がす、まるで海賊のような駆逐艦野郎気質というものが色濃く描かれた一冊。海軍病院で看護婦長にガマガエルを悪戯で仕込むし海外の病院船に乗り込んだときのエピソードなど完全に上流社会に乱入したアウトローのごときカルチャーギャップ。著者だけでなく周りもネズミ取りの上陸許可のために不正は当然という世界2014/06/26
浅木原
4
「潮」乗員の手記。なお半分は開戦前の「菊」「雷」乗艦時の話で、このタイトルなのに「朧」「漣」は名前すら出てこず、なぜか「響」が七駆扱いされている模様。そんな調子で海戦絡みの描写は全く信用できないけど、読み物としてはこれが滅法面白い。特に前半の「菊」での生活の話は、学校出たてで幼い頃憧れた艦に勇んで乗り込んだら艦のオンボロ具合や乗員らの雰囲気にびっくりするけどだんだんそれに染まっていくとかほとんど娯楽小説。「雷」での皇族乗艦時の話もたいそう面白い。ノンフィクションではなく娯楽戦記だと思って読むべき。2014/04/04
sky1931
2
海戦記というより筆者の回想のような感じである。やはり駆逐艦や潜水艦は乗組員が少ないせいか家族のような雰囲気が滲み出てくる。2014/08/05
有海2000
2
作者自身の乗艦についての記述は面白いがそれ以外の記述はすべて伝聞なのでかなり怪しい。自艦の出来事についても数字に関してはいいかげん。七隊小西司令の最後については勘違いなのでしょうが、編集部で指摘すべきだったのでは?ノンフィクションとしては60点だが読み物としてはそこそこ面白い。日米両軍の比較、戦争の見通し、「潮」への信頼など、下士官がどういう風に戦争を見ていたのかがわかって面白い。また、小西司令に関する記述が頻繁に登場するのに反して艦長上杉中佐の記述がまったくない件が興味深い。仲が悪かったのかな…2013/10/16
tora
1
非常にユーモラスで豪快な駆逐艦乗りの戦記。戦闘内容などについて色々と間違い・記憶違いがあるものの、駆逐艦乗りとしてのエピソードについては力が入っていて面白い。狭い艦内の生活で生まれるなバカ話から互いに命を預けられる信頼関係が伝わってくる。2014/11/09