内容説明
戦争によって大きく運命を変えられた海に生きた男たちの悲劇―時代遅れとなった「艦隊決戦」を怒号する軍部のもと、護衛なき補給作戦に従事し、硝煙と血の匂いのなかで人知れず海の底に消えていった船員たちの物語。現在も一般の理解が十分とはいえない、海運というものに携わった男たちの知られざる戦いを描く。
目次
第1章 「12月8日」の海
第2章 ガダルカナルの海
第3章 ダンピールの海
第4章 武器なき海
第5章 苦闘の海
第6章 「8月15日」の海
著者等紹介
土井全二郎[ドイゼンジロウ]
1935年佐賀県生まれ。京都大学経済学部卒業。日本海洋調査会代表。元朝日新聞編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スー
17
56太平洋戦争で日本は2500隻あまりの船を沈められ61200名の船員を失った。鈍足の船で護衛も無くわずかな対空砲を装備して兵士や弾薬燃料を積み悲惨な航海を体験した人達の証言は言葉に表せないほど酷いもので一発でも食らえば船はたちまち炎上か爆発し脱出出来ても今度は漏れた燃料が燃え救命具を着けた人達は逃げ場を失いたちまち火に包まれる。船団は止まらず死の行進を続ける、助かり報告書を提出すれば軍人に面倒と罵倒され気づけば泣きながら殴りっていた、総員退艦で船を降りる前に船倉を覗けば脱出路を失った陸軍将兵が取り残され2021/04/13
植田 和昭
15
軍用犬以下に扱われた船員たちを待ち受ける過酷な運命。すべて船団護衛の重要性を見抜けなかった日本海軍の責任です。特に戦争末期に特攻輸送と称して南方からガソリンを運ばされた人たちの末路は、特に悲惨です。2018/05/10
浅木原
3
太平洋戦争で沈んだ輸送船の生存者の証言を中心に、戦時中の輸送船の悲惨な扱いをまとめた本。艦これ的にはダンピールのときの荒潮乗員の証言があるので荒潮提督は必携。軍部批判は最小限で、あくまで輸送船乗員の証言集に絞ってるので読みやすい。僅か240ページほどの中に70人もの証言が詰まっていて、雑多なまでに次から次へと出てくる輸送船の悲惨な戦いのエピソードの数々が、いかに多くの輸送船が太平洋戦争で沈んでいき、多くの船員が犠牲になったかというのを実感させる。『戦時艦船喪失史』を手元に置いて読みたい一冊。2014/05/23
高木正雄
2
戦場の武勇伝や悲劇はよく伝えられているが、輸送関連で広く知られているのはダンピールの悲劇と対馬丸ぐらいだと思う。しかし、戦場で戦えたのも軍馬以下と言われながら、陸海の将校に威張り散らされ、護衛も付けずに送り出された船員たちのおかげだろう。日本海や瀬戸内海での安全が確保できないのに戦争継続、本土決戦と言うのだから船員にとってはこれはもう悲劇どころではないだろう。2023/10/11
はばたくキツネ
2
太平洋戦争の底辺で戦った民間徴用輸送船、その乗組員たちの証言録。作者もあとがき等で述べているが、こうした民間徴用船についてはあまり記録が残っておらず、その実態もよくわかっていないのだから、これらは貴重な生の証言だろう。海上護衛の概念なき海軍の戦争指導のもと、2,500隻余りの民間徴用船が沈んだという事実には驚きと呆れを禁じ得ない。2013/10/09