内容説明
戦術の研究と新兵器の開発に明け暮れ、戦争遂行の絶対条件となる兵站・補給を軽んじた日本の戦争指導者。世界三位の船舶量を保有する大海運国でありながら三年九ヵ月の戦争間に壊滅した商船隊はどのような航跡を辿ったのか。大戦争の裏方となった戦時輸送船の戦いを日英のロジスティックスの懸隔に見る話題作。
目次
第1章 日本戦時商船隊・苦闘の歴史(膨大な商船の喪失;戦時商船隊は往く ほか)
第2章 日本戦時商船隊悲劇の実録(開戦前夜の悲劇・客船気比丸の遭難事件;民間人最初の大量遭難・客船大洋丸の被雷 ほか)
第3章 イギリス戦時商船隊・苦闘の歴史(大西洋輸送船団の特徴;ドイツ潜水艦の脅威 ほか)
第4章 イギリス・ドイツ商船隊悲劇の実録(第二次世界大戦で最初に撃沈された商船・アセニア事件の顛末;フランス戦線撤退の惨劇・イギリス商船ランカストリアの沈没 ほか)
著者等紹介
大内建二[オオウチケンジ]
昭和14年、東京に生まれる。37年、立教大学理学部卒業後、小野田セメント株式会社(後の太平洋セメント株式会社)入社。中央研究所、開発部、札幌支店長、建材事業部長を歴任。平成11年、定年退職。現在、船舶・航空専門誌などで執筆。「もう一つのタイタニック」で第4回海洋文学大賞入賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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Arisaku_0225
15
副題にある通り、第二次世界大戦における日本とイギリスそれぞれの輸送船や海上護衛を比較しながら、日本の海上護衛の問題を示す。日本の沈没での死亡者数が多い一因に中世の奴隷船を彷彿とさせるような窮屈で、薄暗い船倉での生活を強いていたのが強烈。自軍の将兵を大切に扱えない軍隊は弱い、という仮説が遠いウクライナの戦争を思いながら読んだ。2023/12/03
フンフン
9
日本軍が輸送船の護衛を軽視したために負けたことは、すでにいくつもの歴史書に描かれているが、これはイギリスと比較しているのがみそ。イギリスも、日本と同様の島国で海上輸送が途切れたら国が立ち行かない。イギリスはそこを理解して船団護送に必死になった。日本は艦隊決戦ばかり求め続けて、本国への輸送が遮断されれば戦争継続が不可能になるということを最後まで理解できなかった。その違いが勝敗を分けたのだ。2024/02/19
デューク
5
第二次世界大戦の勝敗を分けた補給戦。これまでスポットライトを浴びることの少なかった、ロジスティクスの戦いでの、日英両軍の戦いを比較した一冊。 補給戦の隠れた主役である輸送船、それを守るべき護衛艦や護衛空母、そして音もなく忍び寄って寝首をかき取る潜水艦。日英両国のこれらの船の特徴や建造思想、そして運用方法について詳しく解説されている。ロジスティクスを軽視するものは、歴史上必ずと言っていいほど戦争に敗れている。そんな事実を思い起こさせてくれる一冊。2017/05/17
涼月
4
資源が無いが故に大陸や南方に進出し、資源が無いが故に戦争に踏み切ったにも関わらず、その輸送に関する無策ぶりは、目を覆わんばかりでした。酷いであろうとは予想して読み始めましたが、想定以上に酷かった…。 大和の沖縄水上特攻が生ぬるく感じてしまうくらいのレベルの状況下、輸送船団の乗員はどの様な思いで、航海にでていたのか…。2018/11/24
蟹
3
光人社NF文庫は「入門」とついていても全く入門ではないケースが少なくないのだが、これは珍しく本当に「入門」。日英の第2次大戦時における商船の運用と護衛の実態、そしてそれらをめぐるエピソードが簡単にまとめられている。エピソードはやや感情的に悲劇性を強調するきらいがあるものの、やはり日英を比較すると日本軍の商船の運用には無理があったのがよくわかる。1隻あたりにあれだけの兵員を詰め込まなくてはならないあたり、日本の国力の限界であったし、それを理解できない作戦を実施してしまった日本軍の兵站軽視をよく表している。2017/07/03
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