内容説明
運命とは、命を運ぶ、と書く。その単純な哲理を信ずることに徹し、激戦のさ中に艦と人とをあずかり、不撓不屈、豪胆なること山の如く、猛けきこと火の如くみずから幸運を招きよせる日本海軍随一の“豪傑艦長”の指揮下に団結し、努力し、苦難に堪え抜いて勝ちつづけた栄光の不沈艦の生涯を描く感動の戦記文学。
目次
第1部 神話の誕生(強運艦「雪風」出動す―南太平洋波高し;荘厳なる海の景色―激闘のスラバヤ沖 ほか)
第2部 強運ワレニ有リ(鉄底海峡の火祭り―戦艦「比叡」沈む;隠忍、苦渋の海にて―魔のガダルカナル急行 ほか)
第3部 苦渋の海に生きる(忘れ去られた伝統―マリアナ沖の敗北;史上最大の海戦に生きる―悔い多き海の史劇)
第4部 ソレデモ「雪風」ハ沈マズ(特攻「大和」との出撃―地獄の門をくぐる;刀折れ矢尽きてなお―さらば「雪風」よ)
著者等紹介
豊田穣[トヨダジョウ]
大正9年、満州に生まれる。昭和15年8月、海軍兵学校卒業。16年5月、霞ヶ浦航空隊付、第36期飛行学生(操縦)。18年4月、ソロモン方面イ号作戦で撃墜され、一週間海上漂流の後、米軍の捕虜となる。21年1月、帰国。中日新聞入社。48年、「長良川」で第64回直木賞受賞。平成4年度中日文化賞受賞。平成6年1月歿
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感想・レビュー
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スー
21
135駆逐艦雪風は数々の激戦を生き延び大和・武蔵・金剛・比叡・信濃の最後を見届け戦後は国民党に引き渡され台湾で解体され最後を向かえる。駆逐艦と言えば海の殴り込み屋で敵艦に肉薄し必殺の魚雷を叩き込むのが役目ですが中盤からは輸送任務に駆り出され多くの駆逐艦が次々失われついに同型艦唯一の生き残りとなってしまう。駆逐艦は乗組員が少ないので雪風一家という感じで艦長と乗組員の一体感がとても強く、特に飛田艦長と寺内艦長の時は最高潮に達し乗組員達は絶対沈まないと自信満々だった。飛田艦長の口癖のうんにょ~がたまらなかった2019/09/15
白義
16
強運と船員の高い練度を持って太平洋戦争にその小躯を走らせた「奇跡の駆逐艦」を主人公にした太平洋海戦史。強運によりダメージを食らわない(飛んできた魚雷がなぜか爆発せずに通り抜けたり、撃たれたロケット弾が不発したり、結構無茶苦茶)、とはつまり船体が傷つかず船員も死なないということであり、その結果として数多の海戦に参加し、船員も熟練の駆逐艦野郎になっていくということ。そんな雪風の戦歴をたどれば、それは自ずと太平洋戦争における日本海軍の歩みそのものに近寄っていく2014/04/18
こまったまこ
11
前半は非常に読みづらく斜め読みしてしまいましたが、途中から「雪風」乗組員の日記からの引用が増えて面白くなってきました。太平洋戦争の洋上戦のアウトラインしか知らなかったので、この作品で「雪風」と共に追体験をすることにより少しずつ分かってきて興味深かったです。「雪風」が戦後まで生き残ったのはやはり運だけでなく、歴代艦長と航海長ほか、乗組員たちとの信頼関係が良かったことと個々の能力が卓越していたからだと思いました。武蔵や大和の最後を駆逐艦側から見た証言も読みごたえがありました。2015/05/03
シャル
7
太平洋戦争を戦い抜き、奇跡の駆逐艦と呼ばれた雪風の戦歴をたどる一冊。勇ましく勝ち進む開戦時から、流れが傾き奮戦するも摩耗するばかりの戦いとなり、大和の特攻を経て、浮き砲台として空を睨むだけとなるその姿は、まさにあの戦争のそれぞれの状況を象徴しているかのようでもある。そして生き残るからこそ、多くの艦の最期を看取ることとなり、僚艦を失っていく様はなんとも物悲しい。そんな中でも各艦長の人柄や乗員たちのやりとりは駆逐艦乗りの心意気を感じさせ、同時に駆逐艦の海戦を知ることにもなる。運と技術が奇跡を作ったのである。2014/07/30
artillery203
4
戦略の失敗は、戦術の成功では補えない。それぞれの任務で、任務達成のために全力を尽くし、生き残り、それでも日本は負けた。最後の雪風を日本に戻そうと奔走するも、叶わなかった関係者の心中は察するにあまりある。2015/11/14