内容説明
彼らは昔、悩み、悶え、日々の猛訓練を通して更なる自己をみつめ「一機一艦」を屠るも日本に勝利の日のないことを、よく理解していた。それでも、外から見れば敢然と出撃していく。「針のムシロ」に座らせられたような出撃に至るまでの特攻隊員たちの生活と環境。基地の周辺に繰りひろげられた数々の純愛物語をとつとつと語り、隊員たちの一挙一動を克明に描く、「あと幾日」と自分の死を限定された若者たちへの追憶。「特攻死」の体験者が自ら描く感動のノンフィクション・ドキュメント。
目次
消えて欲しい「トッコウ」の言葉
特攻隊員は勇者ばかりではない
ケンカの好敵手、田中対吉川
人生の終着駅「出水」基地
ウルシー攻撃への準備
友の死
マラリアの再発
同期生の出撃
田中茂幸の恋
外の敵、内の敵
笊の中の小鳥
行くも地獄、残るも地獄
警備員いびり
明日はわが身、友の出撃
忘れ得ぬ人々
ケンカ相手からの餞別
攻撃目標、大型空母
単機出撃
一対十五、われ敵空母に突入せり
背にPWの囚人マーク
復員船から見る富士
著者等紹介
鈴木勘次[スズキカンジ]
大正14年、愛知県名古屋市の中心部で古くから綿布業を営む鈴木家の次男として生まれる。昭和18年、旧制中学五年生のとき、憂国の念禁じ難く、大空に憧れて三重海軍航空隊へ、第十二期甲種飛行予科練習生として入隊する。その後、日夜にわたる厳しい訓練を経て卒業と同時に上海海軍航空隊偵察隊に入隊するも、戦運、日に日にわれに非なる昭和20年、鹿児島県出水基地へ展開するにおよび、海軍特別攻撃隊の一員に選ばれたが、出水基地より同時に出撃予定の列機飛ばず、単独にて出撃し沖縄周辺にて戦闘行動中の米機動部隊の一航空母艦に突入せるも生還する
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