出版社内容情報
本書は嘘をめぐる現代的問題を視野に入れながら、カントの「人間愛から嘘をつく権利という、誤った考えについて」(通称「嘘論文」)を翻訳・分析するものである。
第 I 部では、嘘という概念についての哲学的分析が行なわれる。そこでは嘘とは何か、正直さの義務はあるのか、嘘がもたらす害悪とは何かという三つの問いに、なるべく平易な文章で回答しようと試みた。
第 II 部では、「嘘論文」の概略を示し、執筆背景について簡単に整理した後、「嘘論文」の翻訳を掲載した。
第III部では、コンスタンのカント批判を踏まえながら「嘘論文」を詳細に分析し、『永遠平和のために』などのサブテキストを用いながら政治に対する道徳の優位というカントの立場を明確化した。(本書「はじめに」より)
(発行=白澤社)
内容説明
「真実を言うことは義務であるという道徳的な原則は、無条件的なもの、絶対的なものとしてと受け取られてしまうならば、あらゆる社会を不可能にしてしまうだろう」というフランスの思想家コンスタンの批判に対し、カントは「人間愛から嘘をつく権利という、誤った考えについて」(通称「嘘論文」)を書き、嘘の禁止に例外はないと反論した。本書は、現代の事象を例に嘘についての哲学的分析を行なったうえで、カントの「嘘論文」を新たに翻訳し分析する。晩年のカントが鋭く提起した嘘をめぐる思考実験の意味を気鋭の哲学者がわかりやすく解き明かす。
目次
第1部 「嘘」概念を整理する(嘘とは何か;正直であれば何を言ってもよいのか;嘘の害悪について)
第2部 カントの「嘘論文」解題と翻訳(カント「嘘論文」解題;カント「人間愛から嘘をつく権利という、誤った考えについて」)
第3部 政治に対する道徳の優位(カントの反論;コンスタンの原理概念;道徳的な政治とは何か)
著者等紹介
小谷英生[コタニヒデオ]
1981年生れ。群馬大学共同教育学部准教授。専門は哲学、倫理学、社会思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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