内容説明
子育て、障碍者介助、病人や高齢者介護など、主に女性たちが担ってきた依存者へのケア労働は、これまで平等や自由の構想から排除されてきた。ロールズに代表される現代の正義論を根底から読みなおし、ケアを受けること/与えることを社会の核としてとらえる、新たな平等の地平を切り拓く。政治思想、法哲学、フェミニズム理論をつなぐ哲学者エヴァ・キテイ著“LOVE’S LABOR”待望の邦訳。
目次
第1部 愛の労働―依存は何を要請しているのか(依存と平等の関係;脆弱性と依存関係の道徳)
第2部 政治的リベラリズムと人間の依存(平等の前提;社会的協働の恩恵と負担)
第3部 みな誰かお母さんの子どもである(政策とケアの公的倫理;「私のやり方じゃなくて、あなたのやり方でやればいい。セーシャ。ゆっくりとね。」―個人的な語り;違いのある子どもへの母的思考)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
35
フェミニズム哲学の視点からケアとは何か、平等・正義とは何かを考察した内容です。非常に刺激を受けました。人は誰かに依存せずには生きることはできません。またケアを受けるということはまさしく依存するということです。そして、ケアを行う依存労働があることによって、人間は相互に影響し合い、人格を高め合うことができるのだと思います。また、自立とは何かを深く考えることもできました。また、ロールズ「正義論」に対して批判を行い、真の平等とは何かを問いかけるものとなっています。新自由主義イデオローグへの批判書だと思います。2017/04/23
ヒナコ
8
ロールズの正義論を下敷きに、フェミニズム理論におけるケアの倫理と平等の原則の両方を実現するべく、議論が展開されている。本書の前半は、フェミニズムの理論史的な問題や、ロールズの正義論の批判などが主で、かなり専門的だった。しかし、後半第6章では、著者のケア労働者としての実体験が具体的につづられており、著者がケアの倫理へと至った過程を理解するのにとても役立った。フェミニズムにおけるケアの倫理だけを読みたい読者は、第6章と第7章から読むのがいいだろう。→2021/01/26
海戸 波斗
0
4400円。手にとって悪かった。ごめんなさい。2020/06/15