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内容説明
自己利益のみを追う人々が共存する、世界大に広がる秩序。これこそ、田口卯吉の夢見たネオ・リベラルな商業共和国である。人々の情熱が惹き起こした明治革命をかろうじてくぐり抜けた彼が、この世界像を手放さなかったのは、いったいなぜなのか。はたして、そのような秩序は可能なのだろうか―。妥協なき彼の思想を、『日本開化小史』をはじめとする彼自身のテクストと、同時代のコンテクストとを綿密にたどり、縒り合わせ、解き明かしてゆく。寄る辺なく、すべてがあわただしい時代の真摯な思考が、“今”を刺戟する。
目次
序章 さまざまなる田口卯吉
第1章 「理」とロビンソン
第2章 『日本開化小史』のhistoriography
第3章 『日本開化小史』の筆法
第4章 「郡県」の政治経済学
第5章 「自愛」の秩序
第6章 「地租増徴」の政治構想
終章 田口卯吉の夢
著者等紹介
河野有理[コウノユウリ]
1979年生まれ。2008年、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。日本政治思想史専攻。現在、首都大学東京都市教養学部法学系准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バルジ
2
『日本開化小史』の印象か強い田口卯吉の思想を同時代の言説と比較衡量した上で浮かび上がらせる良書。終世こだわり続けた「郡県」と「封建」を軸に田口卯吉の夢見た秩序の姿を描き出す。ややもすると極端な自由主義者の趣すらある田口だが、その問題意識や視座は案外論敵とも言える谷干城とも共通する、田口は国家権力の介入が人々の「独立独行」を遮りその発展を妨害することを何よりも恐れる。市場社会のいわば「見えざる手」に委ねることを主張する、この市場と秩序の関係は坂本多加雄の名著『市場・道徳・秩序』の田口卯吉版とも思ってしまった2024/09/16