内容説明
明治の常識「女性は男性に劣る」に真っ向から反論し、生涯にわたり「男女平等」を公言するばかりではなく、個人としての生活でもその姿勢を貫いた福澤諭吉。彼の主張「独立自尊」と、女性の地位向上はどのように結びついたのか。私たちは、彼から何を学び取ることができるのか。関わった女性たちからの影響や、寄せられた多くの批判・反感にも触れながら福澤の真意を読み解き、今もなお古びることのない「近代人」としての肖像を、鮮やかに描き出す。
目次
第1章 福澤諭吉の女性論
第2章 明治維新と士族女性
第3章 「一身独立」する女性
第4章 近代化構想と女性論
第5章 人間交際としての男女交際
第6章 私徳と男らしさ
第7章 諭吉と錦
第8章 最後の決戦
第9章 福澤諭吉はどう読まれたか
著者等紹介
西澤直子[ニシザワナオコ]
慶應義塾福澤研究センター教授。1961年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Olive
4
福澤先生は「日本婦人論」「女大学評論」「新女大学」などまとまった女性論がある。1世紀前に書かれたのにこの”腑に落ちる”感は何だろう。男性や社会に刷り込まれた女性観が近代化を進めるうえで必要だと考えていた。なかなか社会が、そして日本人に浸透することは出来なかった。興味深かったのは、福澤先生の論が学者たちにどのように受け入れられ、拒絶されたか。そしてその根っこが今でも、この社会でも生きているのではないかとも感じる。登録者数が少ないが多くの人に手に取って欲しいと思った一冊です。2021/03/11
壱萬参仟縁
2
女性の一身独立は、フェミニズムであるが、本著にも30ページぐらいから書いてある。スタートラインの平等をいった、J.S.ミルの『女性の隷従』が紹介されている(34ページ)。福澤先生においては、人生というものは楽しみがなければならない(48ページ)。女性の子育て支援は、富岡製糸所などへの伝習工女派遣が挙げられる(68ページ)。福澤先生は夫婦別姓のような、男女の姓から1文字ずつとって新たな姓を名乗る(95ページ)などと卓越した思想がみられる。現代日本は夫婦別姓といってから20年ぐらいは経っているのではないか。2012/11/02
メルセ・ひすい
1
15-137 男女の交際には情感の交(情交)と肉体の交(肉交)の二種類がある。二つは働きの異なるもので、どちらも「至大至重」で欠くことができない。問題であるのは、情交が肉交とセットになってしまうことで、男女の情交は「肉交に離れて独立」すべきである。しかし古人の言葉が「世教」となり、世教が「習俗」トナリ、習俗が「社会の圧制」となって男女の交際を妨げ、「近代の開明」に至っても肉交に惑わされている。 明治の常識とバトル「女性は男性に劣る」。生涯にわたり「男女平等」を公言。福澤諭吉の生涯にわたる主張を説く。2012/02/24