内容説明
第1次大戦中、従軍牧師として前線の塹壕にあったティリッヒは、1枚の粗末な複製画に目をとめる…。啓示的な出会いとなったボッティチェッリから、セザンヌ、ピカソ、ジャクソン・ポロックまで、『文化の神学者』ティリッヒが、「究極的リアリティー」と芸術・建築との関わりを追求した論文・講演の集大成。未刊の資料5点を含む。現代プロテスタント建築への提言はいまなお貴重である。
目次
第1部 ティリッヒの生と思想における芸術(現実と空想の境界に立って;「私はなにものか」からの抜粋;芸術と社会)
第2部 芸術と建築(住まうことと空間と時間;近代芸術の実存主義的様相;神学と建築 ほか)
第3部 小論(真正の宗教芸術;美の一瞬;『新しい人間像』に対する序文的注釈 ほか)
感想・レビュー
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roughfractus02
6
創造は同時に破壊を伴う。単にカオスに陥れるのではないものが創造だとしたら、芸術の創造はその形式を保ちながら、その主題や趣旨によって人間の限界を描き、それを超えた深淵に導くものである、と著者は捉える。絵画はカンバスに描かれ、建築は建物としての機能しながらも、知覚を超えた次元に触れる直観を引き出す芸術を著者は創造的とし、「宗教的」とも呼ぶ。ここから本書は、知覚重視の自然主義や印象主義に歪みをもたらす「表現主義的」絵画や、視覚的象徴を排して「聖なる空虚」と呼ぶような有限の空間の中に無限を導入する教会建築を語る。2021/09/28