感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
一郎二郎
2
自殺可能という自由への捉われは、罪の自覚を太宰に強いた。罪人としての一方の極に身を置き、対極の偽善的なるものを白眼視した。自己を救うべく、自己の奥底を模索するも、凡庸で卑小な自分しか見出し得なかった。<演技>という創造物を生み出す事に命をかけたが、疲れ果て、創造の根源である苦悩する能力をさえ失って、人間失格となった。「正義と微笑」では、支える根拠があった故、遊戯が成立した。「人間失格」では、遊戯は不可能となり、義の為の飛躍は墜落となる。復活のイエスとの邂逅は彼に遊戯の場を提供しただろうが、予感で終わる。2022/06/12
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