内容説明
孤高の画家・熊谷守一は、没後40年を経て今なお新しい。97年の生涯と画業を生い立ちの前から没後の評価まで、諸文献に残された熊谷自身のことば、著者が直接に聞いた話、友人たちや同時代の評論から考察する熊谷研究50年の成果。
目次
生い立ちの前に
生い立ち
美術学校前後
入谷の五人男
樺太行き
“轢死”、“蝋燭”から帰郷まで
付知帰郷
同時代の画家たちの動向
二科会参加の頃
アトリエ新築前後
特別な年一九三八年
表現の転機
後進への助言
戦中、戦後の熊谷
戦後の制作
一九五九年、第一の頂点―熊谷様式の完成
パリ展、第二の頂点―西洋的・東洋的
身のまわりの生きものと日常の生活
最晩年の深化
すべての自画像
晩年の回想と作品
没後の評価
終わりに
著者等紹介
福井淳子[フクイジュンコ]
1945年生まれ。1965年より卒業論文準備のため熊谷守一に話を聞く。1967年、慶應義塾大学卒業。以後1992年まで画廊勤務。その後、熊谷関連の文献を調査(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
71
熊谷守一を紹介した銀座ギャラリー・ムカイの向井加寿枝の娘・福井淳子が、1965年慶応義塾大学の卒論に守一本人に話を聞いた。その後53年を経て、評伝を執筆した。2018年出版。多くの本や雑誌からの言葉を引いて彼の人となりを余すことなく伝えている。晩年になるにつれて抽象的で単純化する絵の変遷を時代を追って、彼にとっては自然なことだし、彼自身も思いもよらない絵の出来を楽しんでいたことがわかる。絵から音楽が聞こえてくることは経験しなかったが、彼も他人の絵を見れば音楽をやっていたかどうかわかると語っていたらしい。⇒2020/08/24
kiho
4
熊谷守一という人の人間的な魅力、やさしさ、そして瑞々しい感性に触れたような気がする⭐いつか作品をじっくり見てみたい。2018/11/11
あきこ
3
本書は熊谷守一の作品と生涯を併せて辿ったものだが、なにか美術とは離れて「生きる」ということを考えさせられた。私たちの毎日は急ぎ過ぎている。世界中が早く明日に届くように競争している。そして富を奪いあっている。そんな中で熊谷守一のような人が存在していたことに驚きを隠せない。本人は随分と生きずらかっただろう。そしてそれを助け続けた人々がいたことにも感動した。人間は捨てたもんじゃない。熊谷の人柄と生き方、そしてその作品は心を洗われるような、そんな存在感を感じる。会ってみたかった。声を聴いてみたかった。2018/04/27
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- 和書
- 小公子 岩波文庫